京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)のチンパンジー用ケージ(檻)の整備をめぐる研究費の不正使用疑惑で、京大は26日、チンパンジーの認知能力研究の第一人者として知られる元所長の松沢哲郎特別教授ら4人が公的研究費など約5億円を不正支出したとする調査結果を公表した。
チンパンジーを飼育、実験するという研究分野の特殊性による、業者への長年の依存体質に基づく癒着と、大学内部の組織の責任を問う声も上がっている。
26日に行われた会見で京大側は、松沢哲郎氏らに研究費の使用ルールを順守する意識の欠如や会計制度の軽視があったと指摘。研究継続のために、架空取引などで業者に対して必要以上に配慮した結果、不正支出に至ったと説明した。
チンパンジーを飼育する大型ケージを扱える業者は独特のノウハウが必要なため限られており、そうした業者に依存した関係を保つことで長期にわたって研究を続けてきたという実態がある。
業者側は大学に対し、ケージ整備を通じて、契約額よりも費用を要して多額の赤字が発生したと主張、補填を求めていた。
松沢氏らは大学の調査に、不正支出について認めたものの、赤字補填については言及を避けた上で、「窮状を訴える取引業者をなんとかしてあげたかった」と述べるにとどめたという。
研究所内のチェック体制の不備も問題の背景にあった。事務職員が、元所長で世界的権威の松沢氏らに対し強く意見できず、会計手続きに問題があることに気づいても、教員の判断を追認せざるを得なかったケースもあったという。