物流技術ベンチャーのGROUND(グラウンド、東京都江東区)は26日までに、開発を進めていた自律型協働ロボ(AMR)が完成し、外資系国際物流大手DHLの柏物流センター(千葉県柏市)に30台納入したことを明らかにした。グラウンドによると「国産の自律型協同ロボが日本国内の物流現場で実稼働に至ったのはこれが初めて」という。
ロボットは高さ1メートル40センチ、幅46センチ、奥行き44センチ、重さは50キロ。約2時間の充電で連続8時間稼働できる。ロボットの周囲にあるカメラやレーザー光などと連携して現在の居場所を把握する。また周囲の人がロボットに気づいてもらえるよう、ロボットの前方1メートル付近を青いレーザー光を照射する。独自開発の人工知能(AI)を組み込み、日々の作業内容を逐次学習。日を追うごとに作業効率を上げている。
電子商取引(EC)サイトを通じて入った注文情報がロボットに付けられたタブレット端末に表示される。作業員はそれを確認し、棚から品物を取り出して、指示されたロボットの棚に入れる。ロボットの最大積載重量は45キロ。
その後はロボットが自動で梱(こん)包(ぽう)作業の場所に秒速約1.2メートルで運ぶ。棚から商品を選ぶという複雑な動作は人間に任せ、移動といった単純な作業をロボットが担う。「人とロボットが役割を分担することで、より高付加価値な仕事に集中できる」(宮田啓友社長)という。
物流施設内のロボットのシステムの組み上げは、DHLサプライチェーン(東京都品川区)と提携するダイアモンドヘッド(同港区)が担当した。柴田幸一朗社長はグラウンドのロボットについて「既設の立体倉庫や物流関連のソフトウエアにも組み込みやすい」と、汎用性の高さを評価している。
物流施設でのロボットの活用は海外が先行している。独国際物流大手DHLも、米国にある倉庫ではロボットを積極的に活用する。
ただ海外のロボットをそのまま日本で使うにはハードルが高いという。広大な土地を確保しやすい海外では物流施設自体が大きく、自動倉庫システムも大型化しており、それにあわせるかたちでロボットも大型のものがほとんど。一方、日本は海外と比べて施設が小さいからだ。DHLサプライチェーンのアルフレッド・ゴー社長は「小型のロボットが必要。日本の在庫管理システムとの連携を考えると、日本のメーカーの方が望ましい」と話す。
新型コロナウイルス感染拡大で物流量が大きく増える中、ロボットが荷さばきに関する機能やサービスの維持に大きく貢献している。少子高齢化で生産人口の減少が続く中、ロボットの役割がより大きなものになっていることは確かといえそうだ。