日産自動車は29日、横浜市の本社で定時株主総会を開いた。構造改革費用計上や新型コロナウイルスの影響も重なった販売不振で令和2年3月期に巨額赤字に追い込まれ、期末配当ゼロを余儀なくされた中、内田誠社長は「株主の皆さまに大変申し訳ない。必ず成長軌道に戻す」と陳謝。来場した295人の株主からは「このままでは会社が消滅しないか」と強い懸念の声が相次いだ。(今村義丈)
2年3月期の最終赤字は6712億円で、前会長、カルロス・ゴーン被告が大規模リストラを掲げた平成12年3月期の6843億円に次ぐ額。1株1500円以上だった株価は300円台に低迷している。内田氏は不満を示す株主に「市場の信頼を取り戻し、株価を回復する」と弁明した。
責任を取って内田氏をはじめ執行役、執行役員の報酬を減額、管理職も昇給を凍結したものの、執行役を兼務していない取締役9人は業績結果の責任がないとして減額されなかったことに対し、株主から不満の声が上がった。
今年度からの中期経営計画では、工場閉鎖などによる生産能力2割削減と同時に、1年半で12車種投入する新型車戦略を掲げる。内田氏は「過去の失敗に向き合い、過度な台数を狙わず着実な成長を図る」と説明したが、新型コロナ禍で今期の業績見通しは示せておらず、株主からは「将来ビジョンが見えない」との厳しい評価もあった。
これに対し、内田氏は日本市場に「改めて力を入れる」と強調。30日発売の電動小型スポーツ用多目的車(SUV)「キックス」、7月15日発表を明らかにした電気自動車(EV)のSUV「アリア」など新型車に搭載する独自技術が「ブランド向上や販売増に貢献する」とし、収益悪化が続いた米国市場も今年の新型車で「成果が出始めた」と自信を見せた。
冒頭、新型コロナ対策で約1時間とした予定に株主から「コロナ禍の中、あえて来た」と苦言が出て、内田氏は「極力多く受けたい」と11人の質問に答弁。取締役再任議案を可決し、1時間51分で終了した。