文部科学省は30日、北海道大の名和(なわ)豊春学長(総長)を解任したと発表した。職員に対するパワハラや無断で有償の講演を行うなど問題行為を繰り返したとして、北大側から文科省に解任の申し出が行われていた。同省によると、平成16年度に国立大学が法人化されて以降、学長が解任されたのは初めて。
国立大学法人法では、大学の自主性を重んじる観点から、学長選考会議から解任の申し出があった場合のみ、文科相が学長を解任することができる。
文科省は北大の選考会議からの申し出を受け、これまで名和氏の問題行為について事実確認を実施。具体的には(1)威圧的な言動や過度の叱責など大学の役員や職員に対する不適切な行為が18件(2)学外の要人との面談を一方的にキャンセルするなど大学の信用失墜行為が2件(3)特定の業者を優遇するために再入札の実施を求めたと受け止められても仕方がない言動などの問題行為が3件(4)大学側の承認を得ずに報酬を得て講演するなど資質を疑われる行為が5件-の計28件に上った。
事実確認の際には、報告書や関係者の証言記録、録音データなどのほか、名和氏本人への聴聞を実施。その結果、事実として「客観的に判断した」という。
文科省は名和氏への聴聞内容について「プライバシーの問題がある」として、問題行為の認否を含めて明らかにしていない。だが、名和氏は29日の取材に「パワハラをしていないという訴えが認められず残念な結果だが、一区切りだ」と回答。処分を不服とする審査請求や取り消し訴訟などの手続きを検討する考えを示している。
萩生田光一文科相は30日の閣議後会見で「選考会からは一部でなく全体的に厳しい意見が上がってきたというのは、問題行為があったと判断せざるを得ない」と指摘。また、1年以上にわたって学長不在の異常な状態が続いていることにも懸念を示した。
関係者によると、平成30年10月、北大職員が名和氏からパワハラを受けたと訴えた。選考会議が弁護士らによる調査委員会を設け、問題行為を認定した。
名和氏は29年4月に学長に就任し、30年12月に体調不良で休職。その後に復職を願い出たが、大学側は認めず、昨年7月に解任の申し出書を提出していた。