【パリ=三井美奈、ロンドン=板東和正】中国による「香港国家安全維持法」の公布に対し、欧州連合(EU)や英国は6月30日、相次いで懸念を示した。欧州では香港の旧宗主国の英国が中国に対して最も厳しい姿勢をとる。EUは中国との外交協力が不可欠だという立場で、米国や英国の対中強硬姿勢とは温度差がある。
ラーブ英外相は30日、下院で「同法を施行すれば、(香港の自治への)明らかな脅威になる」と警告し、中国に法撤回を要求した。
ジョンソン英首相は6月3日付英紙タイムズへの寄稿で、同法は1984年、「一国二制度」による香港返還を定めた中英共同宣言に違反すると反発。中国が法導入に踏み切った場合、97年の返還に伴って発行された香港での「英国海外市民(BNO)旅券」保有者に対し、英市民権取得の道を開く考えを示している。
EUのミシェル大統領は30日の記者会見で、同法の公布について「憂慮している。この法は、香港の高度な自治を著しく損なう危険がある」と述べた。共に記者会見したフォンデアライエン欧州委員長は、国際社会のパートナーとともに、中国への対応を協議中だと明らかにした。
フォンデアライエン氏は先週、環境問題や貿易では中国を「極めて重要なパートナー」と位置付け、対話を続ける重要性を訴えた。そのうえで、中国への対応は、日本や米英など先進7カ国(G7)と連携する方針も示していた。