フリマアプリを運営するメルカリが公式ツイッターで、伊坂幸太郎さんら有名作家10人による「モノ」をテーマにした短編小説を無料配信し、人気を集めている。4月下旬から毎週1作品ずつ公開し、6月30日に最後の作品が配信された。出版社を介さず、IT企業が小説を配信する新たな取り組みに、専門家は「本が売れない時代に、物語の面白さを幅広い層に伝える取り組みだ」としている。
メルカリはスマホなどで簡単に手元の品を売買できるフリマアプリの運営会社。「価値がないと思われているモノにも、背景には物語がある」という考えのもと、今春から「モノガタリ」と銘打ったプロジェクトを展開。公式ツイッターで有名作家による短編小説の連載を始めた。
プロジェクトに参加したのは、伊坂さんのほかに又吉直樹さん、三浦しをんさん、朝井リョウさん、藤崎彩織さん、吉田修一さん、絲山秋子さん、角田光代さん、吉本ばななさん、筒井康隆さん。「人と人との間で、モノが循環することで生まれるドラマ」を共通テーマに、書き下ろしの物語を提供した。
伊坂さんの作品「いい人の手に渡れ!」は、父親と小学1年生の息子の物語。登場する「モノ」は父親が太って窮屈になり、売りに出された「革ジャン」だ。
気に入っていた父の革ジャンが人の手に渡ることを知って落胆する息子を慰めようと、革ジャンは魔導士と戦う戦士に送る、という父親の作り話から、ストーリーが広がっていく。
ぬいぐるみ、ノート、小さな仏像-。書き手が取り上げた題材はさまざまだが、日常の小さな幸せをすくいあげた心温まる物語が配信されている。
4月28日以降、毎週火曜日にメルカリの公式ツイッターで順次公開され、同社の特設サイトにも掲載されている。