新型コロナ治療薬・ワクチンの道険し…「第2波」備えて急ピッチ





新型コロナの治療薬として期待されている、ステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」(ロイター)

 新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの研究開発が欧米で加速している。ただ、有望とされていた治療薬候補の評価が一定しないほか、ワクチンの実用化は来年以降になる可能性が指摘されている。感染の「第2波」も懸念される中、世界が万全な医療体制を構築できるかどうかは不透明なままだ。(ロンドン 板東和正)

■二転三転する評価

 「ぬか喜びはごめんだ。治療薬の効果が確実に検証される前に期待するのはやめておこう」 

 6月17日。ロンドンで医療に従事する男性はそう言って肩を落とした。

 男性が落胆したのは、世界保健機関(WHO・本部ジュネーブ)が同日、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」を新型コロナ患者への効果を調べる臨床試験で使用しない方針を発表したことだ。

 ヒドロキシクロロキンの効果の評価は、これまで二転三転してきた。

 トランプ米大統領が今年3月、新型コロナ治療薬として有望だと主張。一時は自身で服用していると明かしていたことから、全世界で注目された。

 ヒドロキシクロロキンへの期待に冷や水を浴びせたのが、英医学誌ランセットが5月22日に発表した論文だ。死亡率や不整脈が増加する可能性が高いと報告。この影響でヒドロキシクロロキン服用のリスクが懸念された。

 しかし、同誌は6月4日、患者データの検証ができないことを理由に、著者が論文を撤回したと明らかにした。

 論文撤回により、ヒドロキシクロロキンの評価は再浮上するかと思われた。先の論文を受けてヒドロキシクロロキンの臨床試験を一時、中断していたWHOが6月初旬に試験を再開したと発表したためだ。

 ただ、ヒドロキシクロロキンをめぐる「混乱」はこれで終わらなかった。

 WHOは同月17日、入院患者に投与しても死亡率が下がらなかったことを理由に、臨床試験でヒドロキシクロロキンの使用を再び取りやめることになったと明かした。

 冒頭の男性は「わずか数カ月の間にヒドロキシクロロキンの評価が上がったり、下がったりして翻弄された気分だ」と話し、「どの情報を信じて良いか分からなくなった」と不満を漏らした。

■新たな薬も…

 ヒドロキシクロロキンに続いて新型コロナの治療薬として期待されたのは、ステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」だった。通常は気管支ぜんそくなどの治療に使用されている薬だ。

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