濁流にのみ込まれた街が、茶色の「湖」の中に沈んでいた。記録的な豪雨に見舞われた九州北部。一夜明けた8日、川の氾濫で大きな被害を受けた福岡県久留米市と大分県日田市を上空からヘリで取材した。
飽和状態に近い水量をたたえた筑後川が、赤茶色の濁流を有明海に押し流していく。降り続いた雨がやみ、時折晴れ間がのぞく空の下、川沿いに浸水した久留米市城島町(じょうじままち)周辺に向かうと、茶色く染まった町が現れた。
筑後川が大きく蛇行する平野部に広がる同町。見渡す限りの田という田が泥水の中に沈み、支流や道路との境目がわからない。まるで辺り一面が茶色い湖のようだ。水面で反射した太陽の光が鈍く光っている。
点在する住宅群やビニールハウスが小島のように水面に浮かぶ。冠水を逃れた道路を車が往来する様子は見えるものの、家屋の片付けなどはこれからだろうか、外で作業をする住民の姿はほとんど見当たらなかった。
筑後川の支流、玖珠(くす)川流域にある日田市天瀬町(あまがせまち)の天ケ瀬温泉では、狭い渓谷の両岸に並ぶホテルや旅館に泥や流木が流れ込み、変わり果てた温泉街の姿が広がっていた。
対岸同士を結ぶ水色の新天瀬橋が崩落。上流から押し流されてきた流木やがれきを巻き付けながら、川沿いに無残に横たわっている。
さらに上流域では、道路が濁流でえぐられて寸断。川のすぐそばにあった民家には大量の土砂とがれきが押し寄せ、流れの激しさを物語っていた。
川の水位が下がり、町では重機を使った泥のかき出しが始まり、被害を受けた旅館などでスタッフらが片付けに追われる姿も見られた。(有年由貴子)