大阪・京都市内でホテルが相次ぎ開業している。15日にはパレスホテルの宿泊主体型ホテルの西日本1号店とロイヤルホテルの新ブランドホテルが初出店するが、コロナ禍でインバウンド(訪日外国人客)が消え、予約の出足は鈍い。各社は関西の近隣客に軸足を移し、小さなパイを取り合う競争を余儀なくされている。(田村慶子)
「手の届くラグジュアリー(高級)ホテルを目指し、地元のお客さまを中心に呼び込みたい」
パレスホテルの宿泊主体型ホテル「ゼンティス大阪」(大阪市北区、212室)の安井淳総支配人は話す。計画当初は約6割を欧米中心の訪日客と見込んでいたが、新型コロナの影響でターゲットを国内客へと軌道修正した。
白を基調とした自然な雰囲気の客室で、東京でミシュラン1つ星を持つフランス料理店のシェフが監修する一品料理のレストラン・バーや、香水の試用や靴磨きのサービスを提供する共用スペースを併設。東京五輪・パラリンピックなどの需要を見込んでの関西進出だったが、9日現在、予約ベースで開業の15日から数カ月間の客室稼働率は数パーセントと苦戦中。JR北新地駅から徒歩4分に立地し、高級志向の客層が多いことから、まずはレストランやバーの利用を増やし、宿泊につなげたい考えだ。
ロイヤルホテルの「リーガグラン京都」(京都市南区、261室)も、宿泊主体型ながら設備にこだわった。和モダンなデザインの客室で、大浴場も備える。京都で活動する若手アーティストらによるオリジナル作品21点を館内随所にちりばめるなど「ホテルのブランドイメージを損なわないため、家具やアートだけで5億円を投じた」(担当者)という。
ロイヤルホテルの蔭山秀一社長は「泊まるだけでない価値を提供できる。作家の発信の場ともしたい」と意気込む。ただ、15日開業から1カ月間の予約ベースの客室稼働率は約2割。現状は、8月以降も1割台が続き、厳しい状況だ。当面は訪日客が見込めないため、関西在住者限定の宿泊プランなども検討するという。