日本人でありながら、台湾の民主化と自由のために戦い続けた宗像(むなかた)隆幸氏が6日、病気のため東京で死去した。84歳だった。鹿児島県生まれ。明治大学在学中に留学生の友人から中国国民党一党独裁政権によって台湾民衆が虐げられている実態を知り、台湾独立運動に関わるようになった。
最も注目されたのは1970年、言論弾圧によって台北の自宅で軟禁された台湾大学の国際法の権威、彭明敏(ほう・めいびん)教授を救出したことである。宗像氏は日本人の友人のパスポートを変造。取り換えた写真の上に凹凸の割り印を作るために、9カ月間も繰り返し練習するなど綿密に下準備をした。そのパスポートでスウェーデンへの脱出に成功した彭氏は後に、海外における台湾民主化運動のシンボル的な存在となった。知り合いでもない彭氏のために危険を冒した宗像氏は「台湾の恩人」とも呼ばれた。
在日台湾人団体の機関誌の編集長を長年務めた宗像氏は2019年、台湾の外交部(外務省に相当)の招待を受け、反体制運動が弾圧された美麗島事件40周年の記念イベントに出席するために台湾を訪れた際「台湾はようやく自由と民主主義の島となった」と感無量だったという。台北中心部にある台湾独立建国連盟本部で10日から、宗像氏を追悼する特別展示と献花台が設けられる。(矢板明夫)