【ワシントン=黒瀬悦成】米連邦最高裁は9日、トランプ大統領が納税申告書などの財務記録を開示すべきだとする判断を下した。ただ、申告書が一般の目に触れるのは11月3日実施の大統領選以降になる見通し。納税申告に記載された資産状況や商取引の内容を大統領選前に追及されるのを警戒していたトランプ氏にとって最悪の事態は回避された格好だ。
判断は、トランプ氏との「不倫関係」を暴露したポルノ女優らへの口止め料支払い疑惑を捜査している東部ニューヨーク州の検事がトランプ氏の納税申告書などの提出を求めた訴訟に関し、「大統領でも刑事事件をめぐる召喚から完全に免責されるわけではない」として、トランプ氏側が同州の大陪審に申告書などを提出するべきだとした。
一方、民主党主導の下院の3つの委員会がトランプ氏の会計事務所や金融機関に申告書などの提出を召喚状で求めた訴訟に関しては、召喚状が大統領を政治的に追及される材料に活用される懸念があるとして下級審に差し戻した。
3委員会は、トランプ氏による資金洗浄や外国勢力との取引などの疑惑に関し解明する目的で財務記録を要求していた。
トランプ氏は9日、最高裁判断について記者団に「概して満足している」と述べた上で「すべては政治的な魔女狩りだ」と述べ、民主党勢力を非難した。
ただ、トランプ氏は今後、大陪審の判断次第では口止め料疑惑に関し起訴される恐れがある。また、下級審での再審理を経て最高裁が開示を命じた場合、トランプ氏が再選を果たしたとしても改めて窮地に陥る可能性もある。