筑波大学発宇宙ベンチャーのワープスペース(茨城県つくば市)は、衛星間光通信網の構築に向けて、開発中の光空間通信用中継機の実証実験を近く始める。当初は4月に始める予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で実験を延期していた。
宇宙ビジネスの成長に伴い、衛星から撮影した画像を地球に送ることが増えている。世界の地球観測市場の規模はすでに2兆円を超え、年間15%程度の成長が続いているとされる。
ただ昨今急増している地球から500キロ~800キロ上空を周回する低軌道衛星と地球との間で通信できる時間は1日に数十分程度、しかも通信容量には限りがあるなどの課題を抱えている。そこでワープスペースはこの課題解決に向け、衛星間の光通信網を令和4年に構築する構想を掲げた。
欧州で近く実施される実証実験では、開発中の光空間通信用中継機の送受信が円滑にできるかどうかを調べる。宇宙空間と違って地球上は大気による減衰があるなど条件は異なるが、逆に地球上で技術実証ができれば、空気がほとんどない宇宙空間でも問題なく送受信できる可能性が高い。
同社は30日、ベンチャーキャピタル(VC)の三菱UFJキャピタル(東京都中央区)のベンチャーファンド(基金)を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施したと発表。さらに経済産業省の令和2年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)にも採択され、これらにより平成28年8月の会社設立以降の累計調達額が3億円を超えた。同社は調達で得た資金を活用し、中継衛星の設計開発を急ぐ。
ワープスペースは、筑波大学の准教授でもある亀田敏弘会長が平成28年8月に設立。31年1月、シリアルアントレプレナー(連続起業家)の常間地悟氏が社長に就いた。