大阪都構想の制度設計図にあたる協定書が31日の大阪府市の法定協議会で正式に決まった。8~9月に府市の臨時議会でそれぞれ審議される。11月1日の住民投票という“最終局面”が近づく中、住民への情報発信や周知の重要性もより高まってくるが、新型コロナウイルスの感染再拡大で各党の周知活動は抑制的にならざるを得ない状況だ。
「8月に街頭活動を一斉スタートさせる予定だったが、控えることになった。今は街中がそんな雰囲気ではない」。ある大阪維新の会の市議は、街頭で大々的に都構想をアピールできない現状に悩む。
維新は7月21日、住民投票に向け200人超の議員らを実動部隊とする対策チームを創設。駅立ちの目標回数や座談会の頻度など市内24区ごとに活動計画書を作成し、街頭活動も徐々に実施していく予定だった。
しかし、29日に1日あたりの府内の新型コロナ感染者が初めて200人を上回ると、翌30日に急(きゅう)遽(きょ)「いったんリセット」(維新議員)の方針が出たという。
「当面はコロナの状況を見極めつつ、SNS中心の活動とならざるを得ない」と維新議員。代表の松井一郎大阪市長と代表代行の吉村洋文府知事がそろって街頭に立つのも、9月に市議会で協定書が承認された後の見込みで「勝負は住民投票直前の1カ月」とみる。
ただ、松井氏は強気だ。「これまで維新は都構想を争点に何回も選挙を戦ってきた。市民の皆さんにも都構想の必要性は伝わっていると思う」と強調。「前回は賛成派と反対派の対立ばかりが目立った。今回は冷静に落ち着いて制度を説明したい」と話す。
一方、昨春の大阪府知事・市長のダブル選圧勝で示された「民意」を踏まえて反対から賛成に転じた公明党。本格的な活動を9月から予定するが、支援者に方針転換の理由を直接説明できない状況が続くことに焦りを感じる議員も。ある市議は「公明の修正案が反映され、よりよい協定書になったから賛成したということを丁寧に説明したいのだが…」とやきもきする。
公明の選挙活動のスタイルは、支援者を集め、膝詰めで伝える座談会が基本。9月に感染が収束しているか見通せず「スタイルを根本的に変える必要がある」(市議)と頭を抱える。
これに対し、党内の不一致で組織的な活動ができていないのが自民党だ。「反対」の市議団が街宣車で都構想の問題点を訴えるのに対し、府議団は賛成を掲げ、SNSでの発信を開始。自民として意見集約のめどは立たず、統一した活動を行えるかは不透明だ。
一貫して反対を訴える共産党は、各区で議員らが駅立ちなどを行っているが、感染再拡大により縮小を余儀なくされている。市議は「活動はやりづらいが、一人でも多くの人に都構想反対を伝えたい」と話した。