《コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の運営会社「セブン-イレブン・ジャパン」は設立6年となる昭和54年10月に東証2部上場を果たす。同年度の店舗数は800店超、売上高は1千億円を突破。自身は同社社長とイトーヨーカ堂常務を兼務していた》
イトーヨーカ堂も1970年代(昭和45~54年)は順調だった。店舗数も100店を超え、売上高も10年間で26倍超の6900億円に達していた。56年2月期決算では経常利益は百貨店の三越を抜き、小売業1位を記録した。でもその半年後の56年8月中間決算で、経常利益は前年同期比1・7%減の減益となった。創業23年間で初の出来事で、商売をやっていて減益になるなんて考えられなかった。ところが、営業担当は天候不順や社会情勢(イラン革命に端を発した石油高騰)なんかを理由にしていた。天候なんて紀元前から変わり続けているもの、のんきだよね。
僕としては、販売不振に思い当たる経験があった。ある日、家の近所にあったイトーヨーカドーの店に、自分のワイシャツを買いに行ったのだが、僕に合うサイズはなかった。店員に尋ねたら「そのサイズ、売れちゃうんですよね」と平然と答えてきた。昔はね、物のない時代だったから、例えば紳士のワイシャツで袖丈が長いモノしか手に入らなかったらアームバンドで袖を留めて長さを調整して着ていた。お客さんは目の前にある中から選ぶしかない、商品を選べない時代だ。でも時代は変わってきた。
イトーヨーカドーでなぜ、サイズが欠けるようなことが起きていたのか。仕入れ先は大手メーカーなんだけれど、ワイシャツの色は13色あって、色ごとに、小柄な人向けから大柄な人向けまでの全てのサイズを1セットとして仕入れることになっていた。大量仕入れだ。そうして多くのサイズをそろえても、売れるサイズは首周り13インチとか14インチとか、平均的なサイズに限られてくる。だから僕のサイズはなかった。