「こんな差別容認していいのか」 朝鮮学校無償化判決 元生徒の教員訴え


「こんな差別容認していいのか」 朝鮮学校無償化判決 元生徒の教員訴え

 広島朝鮮初中高級学校の高級部(東区)を高校無償化の対象外とした国の処分を、合法と判断した16日の広島高裁判決。学校側の弁護士が「不当判決」との垂れ幕を掲げると、待機していた約150人の生徒や支援者らは、「司法は、学ぶ権利を認めろ!」とシュプレヒコールをあげた。

 判決後、法廷から出てきた原告の1人で元生徒の尹雅璂(ユンアギ)さん(26)はその輪に加わったものの、手も、声もあげずにうなだれていた。同校で高級部まで学び、現在は教員として朝鮮の歴史を教える。「言葉にならない。裁判所がこんな差別を容認していいのか」。その声が憤りに満ちていた。

 西区に生まれた在日3世。初級部でサッカーに心血を注いでいた2006年、北朝鮮が弾道ミサイルの実験を繰り返した直後には、日本の小学校との試合中に「ミサイル」と耳元でささやかれた。外交上の問題から敵視された日本社会にあって、学校は心のよりどころだった。息苦しさを共有する仲間と学び、ルーツへの思いを強くした。

 10年4月に高校無償化を導入した当時の民主党政権が「外交上の配慮などで判断すべきではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」との見解を示した時は、朝鮮学校も対象になると期待した。

 だが、北朝鮮による韓国砲撃で審査は留保され、12年の政権交代後は拉致問題の進展がないことなどを理由に除外された。この時、高級部の卒業を控えた3年生だった。生徒会長として、朝鮮学校も対象とするよう街頭署名活動を展開していただけに「また差別された」と怒りを覚えた。

 無償化除外の先に、ルーツに触れる教育が先細りする懸念があった。「朝鮮半島の歴史を学ばなければ、自分たちの存在も消されてしまう」。進んだ朝鮮大学で教員を目指していた13年8月、広島地裁に提起された訴訟の原告団に加わった。

 先祖がどんな生活をし、なぜ自分たちが日本で暮らしているのか。「自分の国を知ろうという思いは普遍的で、日本人も同じ。ならば等しく、朝鮮学校も無償化されるべきじゃないか」。7年間抱き続けた思いに、司法は応えてくれなかった。

 全国5地裁・支部で起こされた朝鮮学校の高校無償化を巡る同種訴訟のうち、東京、大阪、名古屋は最高裁が上告を退けて学校側の敗訴が確定している。広島の弁護団は上告する方針を明らかにしており、尹さんは「学校は朝鮮半島にルーツがある自分を見いだせる唯一無二の場所。日本社会で生きる私たちの存在を認めてもらうため、最高裁には真摯(しんし)に審理してほしい」と語った。【小山美砂、手呂内朱梨】



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