品質問題が続くシータ2エンジン
現代・起亜自動車が今年7-9月期の業績に「シータ2GDIエンジン」関連の追加引当金など3兆4000億ウォン(約3140億円)規模の品質費用を反映することにした。過去最大規模の品質費用を引当金として計上し、消費者の信頼を回復するという先制的な決定と分析される。
現代車と起亜車はそれぞれ2兆1352億ウォン、1兆2592億ウォンの品質費用を今回の7-9月期の業績に引当金として計上すると19日、公示した。両社は公示で「7-9月期の経営実績に追加引当金設定と先制顧客保護措置のために品質費用を反映する予定」と説明した。また「根本的な改善策の用意とプロセスの革新を通じて品質イシューの再発防止に注力し、消費者の信頼回復に最善を尽くす」と強調した。
現代・起亜車はこの日、アナリストを対象に説明会を開いた。公式業績発表(26日)に先立ち市場の衝撃を最小化する意図があるとみられる。証券業界は現代車の7-9月期の営業利益が1兆ウォンを超えると予想しているが、引当金を反映すれば赤字に転じる可能性が高い。
現代・起亜車は2018年7-9月期に4600億ウォン、2019年7-9月期に9200億ウォンと2度にわたりシータ2GDIエンジンのリコール関連引当金を業績に計上した。その後、エンジン交換事例が予想より増え、追加引当金の反映が避けられないというのが会社側の説明だ。
ハイ投資証券のコ・テボン・リサーチセンター長は「現代車は上半期の不振から抜け出して収益性が改善し、大規模な引当金積み増しを決めたようだ」とし「鄭義宣(チョン・ウィソン)現代車グループ会長の勇断と分析される」と述べた。
◆鄭義宣会長、品質問題に終止符…「費用惜しんで顧客失えば終わり」
「我々のすべての活動は顧客が中心にならなければいけない。顧客の幸せの第一歩は完ぺきな品質だ」。
鄭義宣現代自動車グループ会長は14日、就任のあいさつで「顧客」という言葉を9回も使った。約6分間の就任メッセージを伝えたが、「未来」(10回)の次いで多く使った言葉だ。グループ関係者は「鄭会長は普段から役職員に『顧客の信頼を失えば終わり』と強調してきた」とし「目の前の業績にこだわるよりも、顧客の品質に関する憂慮を最小化するために決断をした」と説明した。
◆費用より顧客の信頼を選択した現代車
現代・起亜自動車は約3兆4000億ウォン規模の品質費用を7-9月期の業績に反映すると19日、発表した。現代車が2兆1352億ウォン、起亜車が1兆2592億ウォンだ。品質保証のための引当金規模では過去最大となる。現代車と起亜車は昨年、約5兆6000億ウォンの営業利益を出した。年間営業利益の半分以上を品質費用として使うということだ。相次ぐ措置にもかかわらずシータ2GDIエンジン関連の品質問題が続くと、適用費用規模を大幅に拡大した。今回の措置で品質問題に終止符を打つという意味と解釈される。
具体的には現代・起亜車の「シータ2エンジン生涯保証プログラム」に基づいて多くの費用を投入し、ほかのエンジンに対しても先制的な措置を取る。現代・起亜車は昨年10月、シータ2エンジンを搭載した国内外の車400万台を生涯保証すると発表したが、この日、さらに多くの費用をここに投じることにした。その費用だけで約2兆8420億ウォンにのぼる。会社関係者は「生涯保証の決定後、エンジン交換事例が予想より多く、引当金を積み増すことを決めた」と説明した。現代・起亜車は保証対象車両の平均運行期間を12.6年水準と推定していたが、これを今回19.5年に修正した。顧客が自社の車に予想より長く乗ると判断したからだ。現代車のソナタ、ツーソン、サンタフェと起亜車のK5、スポーテージ、ソレントが生涯保証対象車両だ。
現代・起亜車はシータ2GDIエンジンに適用したエンジン予防安全新技術「エンジン振動感知システム(KSS)」をほかの一部のエンジン(ガンマエンジンおよびニューエンジンなど)にも装着する計画だ。KSDSはエンジンの振動を感知するシステムソフトウェア。ここに8146億ウォンの費用が必要というのが現代・起亜車の判断だ。会社側は計3兆6566億ウォン規模の費用が追加でかかると算定し、うち3兆3944億ウォンを7-9月期の業績に反映することにした。
現代・起亜車は品質問題が再発するのを防ぐため、根本的な改善策を用意すると明らかにした。品質問題を収集する組織と関連問題を解決する組織を統合して消費者の不満への対応速度を高め、整備現場で発見される品質問題を新車開発にすぐに反映できるように業務体系を変えるという説明だ。
未来の事業となるエコカーの新車品質も大々的に強化すると強調した。会社関係者は「長期的な観点で品質に関する信頼回復が最も重要だと判断した」とし「顧客の不満に積極的に対応し、潜在的なリスクを解消する」と述べた。
7-9月期の業績発表(26日)を1週間後に控えた時点で兆ウォン単位の引当金積み増しを発表した理由については「投資家保護のための決定」と説明した。証券業界では現代車が7-9月期に1兆ウォン以上の営業利益を出したと推定するなど期待が膨らんだため、と関連情報を事前に透明に公開したということだ。
◆シータエンジン問題は解消するのか
シータエンジンは現代車の「独自開発エンジンの象徴」だ。2002年に独自開発し、米ダイムラークライスラーや三菱などにも輸出した。韓国を自動車エンジン輸出国に合流させたという評価を受けた。後続のシータ2エンジンは2009年に登場した。強化された排ガス規制に合わせ、エンジン出力が良く、業界で好評を受けた。
シータ2エンジン関連の問題が浮上したのは2015年のことだ。シータ2エンジンを搭載した車両が走行中に止まる事故が続いたのだ。エンジンの欠陥という見方が出てくると、現代車は同年、車両47万台をリコールした。2017年には米国と韓国で同時にリコールした。韓国の約17万台、米国の約130万台が対象だった。
業界では現代・起亜車が品質費用を厳格に算定したという分析が出ている。ある関係者は「今まで蓄積されたデータに基づき追加でエンジン交換を望む顧客の比率を算定し、今回の費用に反映したと把握している」とし「消費者が問題を提起する前に先制的に対応するという意志のため」と話した。