米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の勝利が確実となったことを受け、日本政府は菅義偉首相とバイデン氏による初の首脳会談に向けて調整に入った。
【写真】バイデン前副大統領に祝意を示した菅義偉首相のツイッター
早期に信頼関係を築き、「強固な日米同盟」を周辺国に示すことを重視しており、各国に先駆けての訪米を狙う。時期としては来年1月20日の大統領就任式後早々を軸に働き掛ける。
首相は9日、首相官邸で記者団の質問に答え、訪米やそれに先立つ電話会談について「タイミングを見て調整していきたい」と表明。同盟強化への意欲も語った。
米大統領が就任に当たりどの順番で各国首脳と会うかは、その国の重要度をどうみているかを示すバロメーターとされる。
前回の2016年は大統領選投開票日の9日後、トランプ氏が最初に会う外国首脳として安倍晋三首相と非公式に協議。ホワイトハウスでの正式な初会談も翌年の就任式の3週間後に実現し、蜜月につながった。その8年前は、アジア太平洋重視政策を取った当時のオバマ大統領が麻生太郎首相を最初に招いた。
政府は対米関係を外交・安全保障の基軸とする。東シナ海で軍事行動を強める中国や核開発をやめない北朝鮮、国交正常化後最悪の関係と言われる韓国などの存在を踏まえると「日米間に隙を見せないことが不可欠」(外務省幹部)という考えだ。
麻生、安倍両氏の訪米が早いタイミングだったことから、今回出遅れれば菅首相に対して「外交が苦手」とのマイナス評価が広がりかねないと懸念している面もある。ある政府関係者は「ホワイトハウス一番乗りを目指す」と明言した。
通例、就任式前に外交活動は行われないため、首相の初訪米は来年2月ごろになるとの見方が多い。既にバイデン陣営に対面の会談や電話会談を申し入れたもようだ。
政府はバイデン氏優勢とみながらも、トランプ氏への配慮から決着が明確につくまで首相の祝意表明を控える方向だった。一方でバイデン陣営との今後の関係を考慮。後れを取る事態も避ける必要があると考えていた。
8日未明に米メディアが「当確」を報道。バイデン氏の勝利宣言に続き欧州主要国が祝意発出に踏み切ったのを見て、同日朝の段階で首相がツイッターに祝いのメッセージを書き込んだ。「早過ぎず遅過ぎずのタイミングだ」。ある外務省幹部はこう胸をなで下ろした。