米紙ニューヨーク・タイムズによると、ドナルド・トランプ米大統領は先週、イランの核施設を攻撃する選択肢について政権幹部に意見を求め、紛争拡大につながるとして制止されていた。
16日のニューヨーク・タイムズによると、イラン中部ナタンツにあるウラン濃縮施設で高性能遠心分離機を地下へ移動させたとする報告書を国際原子力機関(IAEA)が11日に発表したことを受け、トランプ氏は12日、この核施設を攻撃する選択肢について政権幹部に説明を求めたという。
ホワイトハウス大統領執務室での会議には、マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官、クリストファー・ミラー国防長官代行、マーク・ミリー統合参謀本部議長が出席していたという。
記事は消息筋の話として、政権幹部はトランプ氏に、そのような攻撃をすれば中東地域の紛争拡大につながる火花になると警告したという。
ホワイトハウスは報道内容についてコメントしていない。
ロイター通信が伝えた政府筋の話によると、「(トランプ氏は)選択肢を要求した。(政権幹部は)シナリオを提示し、大統領は最終的に、実行しないと決断した」のだという。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは、「イランとの対立は当事者全員にとって悪い結果につながる」という政権関係者のコメントを伝えている。
イラン政府のアリ・ラビエイ報道官は17日、「イラン国家へのいかなる行動も、圧倒的な反応で確実に押しつぶされる」と警告した。
IAEA報告によると、イランの低濃縮ウラン貯蔵量は2015年の核合意で定められた量の12倍に達している。規定の量は最大202.8キロだが、すでに貯蔵量は2442.9キロで、論理的には核兵器を2発、製造できる量になっている。
2015年の核合意は、対イラン制裁を解除する見返りに、イランの核開発計画を検証可能なものにするというもの。トランプ政権は2018年に合意から一方的に離脱した。イランは今年1月、包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれるこの核合意を順守しないと宣言している。
来年1月20日に就任するジョー・バイデン次期大統領は、イランが再び合意内容を全面順守し交渉復帰を確約することを条件に、核合意復帰を検討する用意があるとしている。
アメリカとイランの緊張関係は今年1月、開戦間際かと懸念されるまで悪化した。トランプ氏の指示で米軍が、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官をイラク・バグダッドで空爆して殺害したのがきっかけだった。革命防衛隊によって米軍で多大な犠牲が出ているというのが理由だった。
これを受けてイランは、米軍が駐留するイラク軍施設を攻撃。アメリカ人に犠牲は出なかったものの、国防総省によると100人以上の米軍関係者が外傷性脳損傷(TBI)を負った。
(英語記事 Trump ‘asked for options on strike on Iran nuclear site’)