【北京=西見由章】米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領が、国務長官に穏健派のブリンケン元国務副長官を起用する方針を決めたことを受け、中国側からは安堵(あんど)の声が上がっている。新政権に移行しても米国が中国を「戦略的競争相手」とみなし続けることへの警戒感は変わらないが、気候変動問題などをめぐる米国との協力を「対中包囲網」の突破口にしたい考えだ。
共産党機関紙、人民日報系の環球時報は25日付で、ブリンケン氏が「気候変動問題に関して中国に協力を呼び掛けるだろう」との見方を紹介。また同氏がトランプ政権期にコンサル会社を設立し、米企業向けに中国市場に関するアドバイスを行っていたことにも触れた。同紙英語版も、中国がバイデン政権との間で「気候変動や関税の低減をめぐって協力を開始できる」とする国内専門家の見通しを伝えた。
もっともバイデン氏がオバマ前政権のスタッフを起用したことで、米国が対中融和姿勢に回帰するとは中国側も楽観していない。
環球時報は「中国が最大の課題」と述べたブリンケン氏の発言を紹介。同盟国との協力や米国の価値観を重視する意向にも触れ、手放しで歓迎はしていない。
中国現代国際関係研究院の孫成昊(そん・せいこう)研究員は「時代は変わった。(オバマ前政権のスタッフは)トランプ氏が残した外交的遺産と、オバマ時代への回帰との間でバランスをとるだろう」と同紙英語版に指摘した。
「対中強硬派のポンペオ国務長官と比べればブリンケン氏ははるかに対応しやすく、中国上層部は安堵しているはずだ」。北京の経済専門家はそう指摘しつつ「バイデン氏はトランプ氏以上に厳しい対中姿勢をとる可能性もあり予断を許さない」と分析した。