【ワシントン=黒瀬悦成】今年の米大統領選の民主党指名争いにも出馬した民主党のスウォルウェル下院議員(カリフォルニア州選出)が、中国の女性スパイに籠絡(ろうらく)されて情報収集に協力していたと一部米メディアが報じ、波紋を呼んでいる。スウォルウェル氏は米政府の機密情報に触れる機会の多い下院情報特別委員会に所属しており、共和党陣営は同氏が委員会メンバーから外れるべきだとして追及姿勢を強めている。
米ネットメディア「アクシオス」が米情報当局者の話として伝えたところでは、問題のスパイはクリスティーン・ファン(別名ファンファン)と名乗る20~30代の中国人女性で、留学生として、サンフランシスコ近郊にあるカリフォルニア州立大学イーストベイ校に通っていた。
米当局者によると、ファン氏の正体は中国国家安全省の工作員で、2011~15年に米西海岸を中心に米国各地で政治家や地方都市の首長らと交流を深め、米国内に親中世論を作るための工作や情報収集を行っていたとされる。
中西部の市長らの中にはファン氏と性的関係を結んだ者もいたとされる。同氏は収集した情報をサンフランシスコの中国領事館の工作責任者に報告していた。機密情報を盗み出した形跡はないという。
ファン氏はスウォルウェル氏に関し、14年の中間選挙で再選を目指していた同氏の選挙資金集めに関わるなどして関係を深めた。以前からファン氏の活動を監視していた米捜査当局は15年、その正体をスウォルウェル氏に説明。スウォルウェル氏はファン氏との関係を直ちに絶ったという。
ファン氏は15年半ば、連邦捜査局(FBI)の捜査が本格化したのを受けて突然出国し、中国に帰国したとみられている。
ファン氏による工作活動はオバマ前政権時代に実施されたが、米情報機関は中国が米国内で継続的に情報収集や浸透工作を展開しており、バイデン次期政権も標的になるのは確実とみて警戒を強めている。