韓国化学大手のロッテケミカルが日本JSRのエラストマー事業部の買収を推進する。契約が成立すればロッテケミカルは汎用石油化学中心の事業構造から脱却し、高附加(スペシャリティ)製品進出のための足がかりを確保することになると予想される。
20日、投資銀行(IB)業界によると、ロッテケミカルはJSRのエラストマー事業部買収のための実態調査作業を最近終了した。ロッテケミカルは野村証券を主管社に選定して買収を推進している。
JSRは半導体工程に使われるフォトレジスト部門で世界市場シェア1位の会社だ。エラストマー事業部は合成ゴム、二次電池用負極材バインダー、ラテックスなどを生産する。JSRは高機能性タイヤに使われる合成ゴム(SSBR)市場で世界5位を占めている。SSBRは一般タイヤに比べて摩耗が少なくガス排出量を減らすことができるため、エコタイヤなどに使われる。JSRは、日本・タイ・ハンガリーなどに年間17万トン規模のSSBR生産設備を保有している。合成ゴム生産量は年間60万トンに達する。エラストマー事業部は2019年1兆8000億ウォン(約1700億円)の売上を記録した。
ロッテケミカルはイタリア・ペルサリス社と合弁会社(JV)を設立し、2017年から年10万トン規模で高性能タイヤ用SSBR設備を稼動している。だが、毎年この事業で数百億ウォン台の赤字を記録するなど、なかなか安定した業績をあげられずにいる。完成車メーカーなど既存客の品質認証手続きなどが難しく、新規企業の進入が容易ではないためだ。JSRの事業部を買収すればグローバルタイヤ会社が求める製品基準を一気にクリアできることが期待されている。ロッテケミカルの既存主力製品であるブタジエン(BD)とスチレンモノマー(SM)などが合成ゴムの原材料として使われていることから、シナジー効果も明確だという評価だ。
JSR側は最大1兆ウォン水準の価格を希望していることが分かった。ただし、昨年の新型コロナウイルス(新型肺炎)の余波で赤字転換したことが価格算定の際の変数になる見通しだ。