2025年は、前半だけで重大な自動車関連ニュースがいくつも駆け巡っている。経営危機で揺れる日産は、BEV用バッテリー新工場設立計画の撤回を発表した。これは単純な後退なのか?それとも未来のバッテリーに注力する戦略なのか?
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※本稿は2025年6月のものです
文:井元康一郎/写真:日産
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
バッテリー新工場計画撤回は全固体電池注力の布石か?
日産は2025年5月9日、福岡県北九州市に計画していた電池新工場の建設を断念した。
経営危機の打開に追われる日産は、北九州にLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)工場を設立するという計画を撤回した。
LFPは重量、体積あたりの蓄電能力が低いため、当初はBEV(バッテリー式電気自動車)に不向きと考えられていたが、中国メーカーがLFPの改良を重ね、コストの安さと耐久性の高さというメリットが注目されるようになったという経緯がある。
LFPの世界大手は中国のCATL、BYDなど。日産の新工場はそれに対抗するという意味合いがあったのだが、今からLFPをやってもコスト、技術の両面でキャッチアップするのは困難。
ならばLFPは外部調達ですませ、先端技術である全固体電池の早期実用化に注力したほうが得策と判断したとみられる。
ただ、その全固体電池も中国勢が総力を上げて研究開発を進めており、圧力は強まるばかり。日産は2027〜2028年頃の実用化を表明しているが、先んじられるかは不透明だ。