「物価上昇率が0%台とは空笑いが出る」。
2日に統計庁が発表した1月の消費者物価動向を取り上げた記事に付けられたコメントだ。先月の消費者物価指数105.79は1年前より0.6%上がった。昨年10月から4カ月連続で0%台の上昇だ。政府統計では「ゼロ物価」だが「体感物価」との乖離は大きい。昨年は台風や豪雨で収穫量が減った野菜と果物に、高病原性鳥インフルエンザ(AI)の余波で卵の価格まですべて上がった。
旧正月連休後がもっと心配だ。各種加工食品の価格引き上げが待っている。即席ご飯で1位と2位のCJ第一製糖とオトゥギは旧正月連休後に製品価格を6~7%引き上げる。この数年間価格を据え置いてきた即席めんメーカーも引き上げカードを手にしている。コメと小麦など穀物価格上昇で加工食品価格もともに上がる様相だ。
「第3次アグフレーション」の前兆と懸念する声が出る理由だ。アグフレーションは農業を意味するアグリカルチャーとインフレーションを合わせた言葉だ。農産物など食料品価格上昇が一般物価まで引き上げることを意味する。
NH投資証券のチョ・ミジン研究員は「トウモロコシと小麦価格が大きく上がり在庫を使い果たした食品メーカーとしては価格引き上げが避けられない状況。穀物価格上昇が当初予想より長期化しアグフレーション発生の可能性が提起される」と指摘した。
◇世界の食糧価格指数6年ぶり最高値
世界の穀物市場の雰囲気は尋常でない。昨年下半期から上がった価格が下がる様子は見られない。国連食糧農業機関(FAO)が7日に発表した世界食糧価格指数(2014~16年平均値=100)は先月113.3で前月より4.3%上がった。8カ月連続で上昇し、2014年7月の116.4以降で最高値を記録した。品目別でも穀物が124.2で7.2%上昇したのをはじめ、油脂類・肉類・乳製品・砂糖の残り4品目群もすべて価格が上がった。
FAOは食糧価格がさらに上がる可能性が大きいと予想している。FAOシニアエコノミストのアブドルレザ・アバシアン氏は「食糧インフレはもう現実だ」と話す。
2000年代以降にアグフレーションは2度現れた。第1次アグフレーションは2006~2008年で、中国とインドなど新興国の穀物需要が増えた上に気象異変で食糧生産量が不安定になり本格化した。米連邦準備制度理事会(FRB)の低金利・ドル安政策で放出された資金が穀物を含む商品市場に流入して価格を引き上げた。
第2次アグフレーションは2011~12年で、この時も欧州発の財政危機による世界的な景気低迷を防ぐため米国と欧州が通貨量を増やし穀物などの商品価格が上がった。ここに米国とロシアなど主要穀物生産国で深刻な日照りが発生し価格が急騰した。
◇気象異変にコロナ変数まで悪材料重なる
現在の状況は第1~2次アグフレーションの時と似た流れを見せている。まず中国とインドなど新興国の食糧需要が増加している。フィナンシャル・タイムズは「昨年から中国でアフリカ豚コレラ(ASF)が一段と鎮まり豚の飼育が正常化し穀物消費が増えている」と伝えた。新型コロナウイルス抑制に成功したインドもやはり食糧消費が増加している。
気象異変もある。昨年米国や中国、欧州などでは猛暑と集中豪雨、日照りなどが現れ、作況に大きな打撃を受けた。世界気象機関(WMO)によると5月までラニーニャ現象が続き、北米と南米など主要穀物輸出国の生産と輸出に支障が出る恐れがあるとの見通しもある。
新型コロナウイルス変数まで加わった。国をまたぐ移動の制限により肥料・殺虫剤などの供給と、農産物の種まきと収穫などに必要な労働力の円滑な移動が難しくなった。物流まひにともなう食糧サプライチェーン混乱現象も発生している。
各国が食糧安保を強化し農産物輸出制限と関税などの食糧保護主義の動きも農産物価格を揺るがせる要因だ。フィナンシャル・タイムズは「最近の小麦価格上昇には世界最大の小麦輸出国であるロシアが自国の小麦供給が足りないからと輸出関税を上げ海外供給量を減らしているのが大きい」と伝えた。
バイデン政権のバイオ燃料生産拡大政策にともなうバイオ燃料需要増加もトウモロコシと大豆価格を引き上げかねないという分析も出ている。ここにドル安の中で世界的にだぶついた莫大な資金が農産物に流入し食糧価格の追加上昇をあおりかねないとの見方もある。
KB証券のキム・ヒョジン研究員は「米農務省は小麦など主要穀物の需要に対し在庫が今後増えると予想するが、作況不振などにより価格がさらに上昇するだろうという見方が多くなっている。物価変動要因として食料品価格を見守らなければならない」と話した。