第19代国会の院構成が終わった直後の2012年7月、企画財政部の洪楠基(ホン・ナムギ)政策調整局長(当時)はサービス産業発展基本法の政府案を国会に提出した。雇用創出と内需産業への波及効果が大きいサービス業を集中育成しようという趣旨でまとめられた法律だ。
だがサービス産業発展基本法は医療民営化の土台として作用するだろうという市民団体の主張と、これと関連した政界の攻防を受け法案廃棄と再立法推進など漂流を繰り返した。10年前に法案の実務責任者だった洪局長が首相代行になる間に韓国のサービス産業は漠然とした主張と過度な不安に捕われ事実上足踏みだけしていたと指摘される。
◇先進国と格差拡大するサービス産業
26日の企画財政部によると、昨年の韓国の付加価値生産額のうちサービス産業の割合は62.3%だった。2008年の61.9%から0.4ポイント拡大するのにとどまった。サービス産業発展基本法が国会で寝かされていた10年ほどの間に韓国のサービス産業も規模を大きくできないまま停滞状態にとどまっていたという評価だ。
同じ期間に主要先進国のサービス産業は成長が続いた。サービス業先進国である米国の2018年のサービス業の割合は79.8%で、2008年から2.5ポイント増えた。韓国との格差は20ポイントに迫る。英国は同じ期間に77.1%から79.7%に、フランスは77.4%から78.9%にそれぞれ割合が高まった。
2008年に韓国とサービス業の割合が似ていたフィンランド(63.9%)とアイスランド(68.7%)もサービス業育成に成功した。両国のサービス業の割合はこの10年間でそれぞれ5.5ポイントと4.7ポイント高まった。韓国との格差もそれだけ広がった。企画財政部関係者は「サービス産業発展基本法が国会の敷居を越えられずにいる間に主要国とのサービス業格差はさらに広がっている。いまからでも法案を通過させて格差を減らす努力をしなければならない」と話した。
サービス産業発展基本法案には官民合同サービス産業発展委員会を設置しサービス業の体系的な発展を試みる内容が含まれている。委員会を中心にサービス業発展5カ年計画などを作り、財政・税制・金融など支援を拡大する方針だ。支援分野は流通・医療・観光・教育・物流などすべてのサービス業分野を包括する。
サービス業の研究開発を税制支援対象に含ませることが代表的な支援策のひとつだ。現在は製造業の研究開発を中心に税制支援されるためサービス業は支援対象にならないケースが大部分だ。委員会が構成されればサービス業の特性を反映した研究開発の概念を確立し、サービス業の研究開発にも税制・財政優遇を与える計画だ。
◇法案議論は「無限空転」
国会では「共に民主党」のイ・ウォンウク議員、「国民の力」のリュ・ソンゴル議員、チュ・ギョンホ議員が発議した3種類のサービス産業発展基本法制定案が係留中だ。
基本骨子は法案が初めて発議された10年前と大同小異だ。だが、医療界と市民団体などが医療・教育・公共サービスなどの料金が大きく上がるという反対の主張を曲げず、現在は医療関連4件の法案をサービス産業発展基本法適用対象から除外するこの議員案を中心に検討されている。
韓国政府は新型コロナウイルスで観光・飲食店など対面サービス業が大きな打撃を受けたいまがサービス産業発展基本法通過のゴールデンタイムだとみている。被害を受けた小商工人を支援し、第4次産業革命時代を先導するサービス企業を誕生させるためにも、これ以上サービス産業発展基本法の通過を先送りしてはならないということだ。
10年前に政策調整局長として法案を作った洪楠基首相代行が最近自身のフェイスブックにサービス産業発展基本法通過を促す長文を投稿したのも同じ脈絡だ。洪首相代行は「新型コロナウイルスの衝撃が大きかった卸小売・飲食宿泊などなどサービス業は生き残りに向けた突破口が切実な時。緊迫した状況の中でサービス産業発展に向けた踏み石の役割をするサービス産業発展基本法の立法をこれ以上先送りすることはできない」と強調した。その上で「サービス産業の生産性を主要国水準に引き上げれば成長率が1ポイント以上高まり15万件以上の雇用を追加で作れる」という内容の韓国開発研究院(KDI)の研究結果を紹介した。
サービス産業発展基本法は2月に公聴会を特別な異論なく終えたが、先月と今月の臨時国会で法案小委の議論対象にならなかった。政府は来月の国会で再びサービス産業発展基本法通過を推進する計画だ。