高騰する人民元の価値に中国の忍耐心が限界に達した。中国通貨当局が14年ぶりに外貨預金準備率引き上げという強力なカードを切り人民元高にブレーキをかけた。
中国人民銀行は先月31日、自国内の銀行など金融機関の外貨預金準備率を15日から現行の5%から7%に引き上げると明らかにした。中国当局が外貨預金準備率引き上げカードを切ったのは2007年に4%から5%に引き上げてから14年ぶりだ。外貨預金準備率が上がれば銀行はより多くのドルを預金準備金として保有しなければならない。市中のドルを吸収してドルの価値を高めるということだ。中国経済メディアの財新は「預金準備率が2ポイント高まれば200億ドルの資金が回収され人民元上昇圧力を緩和できるだろう」と予想する。
外貨預金準備率引き上げカードで中国当局が市場に強力なシグナルを送ったという分析も出ている。外貨預金準備率引き上げは頻繁に使われないカードの上に、引き上げ幅も2
ポイントと大きいためだ。
中国当局が預金準備率引き上げまで持ち出したのは、3年ぶりの高値となった人民元の上昇を和らげるためだ。1日基準で人民元は1ドル=6.37元だ。4月以降3%以上上がった。昨年と比較すると11%ほど上昇した。最近の人民元高は中国の急速な経済回復への期待感で外国人資金が大挙流入して触発された。香港で中国本土の証券市場に流入する北向資金はこの7週間連続で純流入を記録した。先週には468億元が純流入し週間基準で過去最大となった。
人民元の上昇は中国政府には諸刃の剣だ。国際原材料価格上昇で中国の生産者物価指数(PPI)は1年前と比べ3月が4.4%、4月が6.8%上昇し、3年6カ月来の最高となった。それでも原材料価格の衝撃を相殺したのが「強い人民元」だった。だからと人民元高を放っておくには中国当局が計算に入れなければならないことがひとつやふたつではない。人民元高の中で海外資金の流入傾向がさらに強まりかねない。中国国内に資金が集まれば不動産と証券市場などの資産市場が過熱する恐れがある。長期的に人民元高は中国の輸出品の価格競争力を奪いかねない。
中国政府が人民元高にベッティングする投機勢力に一種の警告を送ったという分析も出ている。コメルツ銀行の周浩エコノミストはブルームバーグとのインタビューで、「人民銀行は人民元上昇が続いても市場の過熱を防ぐ多様な政策的手段があるという点と、(人民元高に対する)投機的ベッティングをしたとすれば失敗するだろうことを示そうとしたもの」と話した。
それでも人民元相場を市場に任せるという中国当局の基本立場に当面は大きな変化はないものと市場はみている。習近平国家主席がモラルハザードを防ぐために市場自由化などを追求しなければならないと明らかにしただけに、軌道から簡単に外れないだろうという予想だ。外為市場に直接介入するよりは今回のように市場の裏で動くだろうという話だ。スタンダード・チャータードの中国マクロ戦略責任者ベッキー・リュウ氏は「今回の措置は単発性の変化ではなく今後の変化と関連した流れの始まり。景気対応調節手段とともに中期的に新たな人民元管理体系とみられる」と話した。