2018年にフランス領ギアナからフランスのロケット「アリアン5」が英国と日本の通信衛星を搭載して離陸している。このロケットの上段部分に衛星が搭載されている。 [中央フォト]
29年前に韓国国内で初めて人工衛星を打ち上げたKAIST(韓国科学技術院)が、これまで蓄積した小型衛星の技術を民間に移転する。民間企業が保有する衛星技術が一段階飛躍できるよう支援するということだ。
KAIST人工衛星研究所は最近、ハンファスペースハブ、LIGネクスワン、韓国航空宇宙産業(KAI)の3カ所と了解覚書(MOU)を締結した。これら企業はKAISTにそれぞれ50億-100億ウォン(約5億-10億円)を支払って衛星関連技術を受ける。KAIST人工衛星研究所は1992年に人工衛星(ウリビョル1号)打ち上げに成功した。小型衛星分野でKAISTの技術国産化率は96%。権世震(クォン・セジン)KAIST人工衛星研究所長は「5、6年以内に技術が移転されるだろう」と述べた。
これまで韓国国内では5つの研究機関と企業が人工衛星の設計段階から組み立てまで終えるのに成功した。公共部門ではKAIST、韓国航空宇宙研究所、国防科学研究所(ADD)、民間部門ではKAI、セトレックアイだ。セトレックアイはKAIST人工衛星研究センターの研究員が創業し、ハンファグループが買収した。
ハンファスペースハブは宇宙で複数の人工衛星がレーザーを利用して高容量データをやり取りする技術をKAISTから受ける。同社の研究プロジェクトには、グループ系列会社ハンファエアロスペース、ハンファシステム、ハンファ、セトレックアイの職員が参加している。
KAIは超小型衛星体に入る電力システムと地上局の技術を受ける。宇宙に浮かぶ人工衛星が太陽光を利用してバッテリーに電力を貯蔵し、活用する技術だ。人工衛星が地上とデータを交わす技術も重要な要素となる。KAIはこうした技術を活用して事業化を推進する計画だ。
LIGネクスワンとKAISTは小型衛星を共同開発する。重さ8キロ、大きさ10センチx20センチ×30センチの6U級キューブ衛星だ。搭載体を載せて宇宙に送る衛星のうち、現在の技術で実用化できる最も小さなサイズだ。LIGネクスワンの関係者は「今後は超小型衛星が宇宙開発の核心競争力になる」とし「今回の技術移転で一次元高い技術力を確保することになった」と述べた。続いて「2023年のアジア太平洋地域の衛星航法市場規模を400兆ウォン規模と推定している。超小型衛星開発を操り上げれば、それだけ未来を先に獲得できるということ」と話した。
今後、KAISTは新しい宇宙探査分野に研究力を集中する。KAISTが挑戦する分野は2つある。まず人工衛星「ウリビョル1号」を地球に帰還させるプロジェクトだ。現在「ウリビョル1号」の状態は厳密にいえば宇宙ごみとなる。すでに25年前に寿命(5年)を終えた。しかし高度1314キロで地球を回っている。
「ウリビョル1号」の軌道にロボットアームが付いたランデブー衛星を打ち上げるのがKAISTの構想だ。今まで国内ではランデブー衛星を宇宙に打ち上げた事例がない。KAISTによると、宇宙に打ち上げられたランデブー衛星は「ウリビョル1号」を捕獲した後、軌道を抜け出すことを目標とする。大気圏に進入して6000度の超高熱で「ウリビョル1号」を処理する一種の「葬式」をするか、「ウリビョル1号」を地上に戻すかだ。具体的な処理案は今後、国防部など関連機関と協議を進めるという。
ランデブー衛星が「ウリビョル1号」とドッキング(結合)するにはまず、衛星間の距離を正確に測定する必要がある。続いて2つの衛星が接近した際に精密に結合する技術が求められる。ランデブー衛星が成功すれば、従来の衛星を軌道から離脱させたり、大気圏に再進入させる技術も蓄積できる。
「ヴァン・アレン帯」探査衛星プロジェクトに挑戦することもKAISTには新しい課題だ。ヴァン・アレン帯とは、地球の磁場で放射能とイオンが高濃縮状態で存在するドーナツ形態の領域をいう。この領域を通過できてこそ、小惑星や月よりも遠い宇宙(深宇宙)の探査が可能だ。
KAISTは韓国型ロケット(「ヌリ」)技術を応用し、地球の低軌道(高度600キロ)に衛星を投入するという構想だ。探査衛星がここに入れば軌道変更に挑戦する。ヴァン・アレン帯は高度600-3万キロに広がる。衛星は求心力によって一定の楕円形軌道を回る。ここに推進機を付けて軌道変更を図る計画だ。科学技術情報通信部のクォン・ヒョンジュン巨大公共研究政策官は「KAISTが深宇宙探査技術に挑戦できるよう支援する」と述べた。