韓国政府、脱原発を掲げたが…電力不足を原発で埋めた


新古里(シンゴリ)原発3・4号機の全景。[写真 韓国水力原子力]
新古里(シンゴリ)原発3・4号機の全景。[写真 韓国水力原子力]

昨年、韓国電力(韓電)が買い取った原発生産電力が文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の最大値となり、前政権レベルに迫った。石炭発電を減らして生じた電力の空白を最も安い発電源の原発で満たしたためと分析される。

尹永碩(ユン・ヨンソク)国民の力議員が韓電から提出を受けた資料によると、韓電が昨年、発電会社と民間発電から買い取った電力は計52万9607GWhだった。国内電力インフラを独占する韓電はこれを消費者に販売する。

このうち原発で生産した電力は15万2312GWhで、全体の28.2%だった。韓電が買い取った原発生産電力は文政権発足後、2018年に12万6993GWh(23.1%)まで低下したが、2019年には13万8607GWh(25.6%)とまた増加に転じた。昨年は文政権が「脱原発」を叫ぶ以前の水準、2016年の15万4175GWh(29.7%)に迫った。

これは文政権が掲げた脱原発政策基調とは反対の流れだ。政府の意図とは違い、原発依存度が高まっているという点でだ。温室効果ガス削減と炭素中立(カーボンニュートラル)のために石炭発電を減らし、代替発電源として原発の稼働を増やしたためという分析が出ている。

◆原発発電の単価、新・再生可能エネルギーの40%

実際、韓電が買い取った石炭発電電力は2017年には22万8848GWhで全体の43.1%を占めたが、昨年は18万6922GWh(35.3%)まで減少した。新・再生可能エネルギー買い取りは同じ期間に2万3845GWh(4.5%)から3万1805GWh(6.0%)に増えたが、石炭発電の減少による電力の空白を埋めることはできなかった。さらに新古里(シンゴリ)原発4号機を含め、整備などで稼働が停止していた一部の原発がまた正常稼働に入った点も影響を与えた。電力を安定的に供給する原発の役割がそれだけ大きくなったのだ。

ソウル大の朱漢奎(チュ・ハンギュ)原子核工学科教授は「温室効果ガスを排出しない低炭素エネルギー源である原発をなくしながら『脱石炭』をするということ自体が矛盾という事実を政府が自ら証明した格好」とし「政府はエネルギー政策を展開するが、政治・理念価値に埋没するのではなく、各エネルギーの経済性・環境性などを総合的に考慮して現実的で効率的な代案を出すべきだ」と注文した。

政府が原発依存度を減らせないのは、原発が経済性の側面で他のエネルギー源に比べて優位にあるという理由もある。昨年、韓電の発電源別買い取り単価を見ると、原発はkWhあたり59.69ウォンと、石炭(81.62ウォン)、水力(81.73ウォン)、LNG・複合(99.25ウォン)、新・再生可能エネルギー(149.4ウォン、政府補助金を合わせた金額)より安い。2016-2020年の5年間の統計で、原発は主要エネルギー源のうち最も低い単価を維持している。政府は新・再生可能エネルギー供給が増えるまで液化天然ガス(LNG)発電を増やして脱石炭を補完するという計画だが、LNGは全量を輸入に依存し、価格変動も大きい。

今年の原発依存度はさらに高まる見込みだ。4月までの韓電の原発生産電力買い取りは5万650GWhと例年より増えた一方、石炭発電電力の買い取りは減っているからだ。尹永碩議員は「原発依存度の上昇は、政府の脱原発政策設計が当初から間違っていたことを自ら認める格好」とし「政府が今のように脱原発政策を固守しながら炭素中立を強行すれば、電力供給不安、電気料金引き上げなどの副作用を招くしかない」と指摘した。尹議員は「政府は政策の失敗を認めて原発生態系を復元させるべき」と主張した。

一方、再生可能エネルギーの拡大による原価負担増加で消費者が出す電気料金が大幅に引き上げられるという分析が出てきた。グローバルエネルギーコンサルティング会社ウッドマッケンジーは15日、「再生可能エネルギーの拡大で2030年に韓国の消費者が出す電気料金は昨年比で24%上昇する」と予想した。これは政府が「第9次電力計画公聴会」で明らかにした上昇率(2017年比10.9%)と大きな差がある。

◆「脱原発なら9年後に電気料金24%上昇」

電力・再生可能エネルギー部門アジア太平洋地域責任者のアレックス・フィトワース氏は「再生可能エネルギーの比率が増えれば安定した電力供給のために電力網自体に対する投資が増えなければいけない」とし「一部の欧州国家は再生可能エネルギー発電の比率が30%となり、電気料金が倍に高まった」と説明した。ただ「韓国は他国に比べて電気料金が相対的に安い方であり、24%上昇しても合理的な水準」と話した。

ウッドマッケンジーは、韓国政府が設定した2030年の電力部門温室効果ガス削減目標について、「脱原発」による原発比率縮小および化石燃料への高い依存度のため達成は容易でないという見方を示した。韓国政府は2030年の電力部門温室効果ガス排出目標を、2017比23.6%減の1億9300万トンと設定している。

フィトワース氏は「原発の比率を低めると同時に、石炭・ガス発電のような化石燃料の使用を十分に減らすことはできないはず」とし「電力部門の二酸化炭素排出量は2030年までに2億5100万トンとなり、昨年比で7%増加するだろう」と予想した。



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