SDバイオセンサーのチョ・ヨンシク会長 写真=キム・ヨンウ記者
平凡な診断会社SDバイオセンサーを「韓国で最もよく稼ぐバイオ企業」にしたのは新型コロナだった。2019年に729億ウォンだった売上高は昨年1兆6861億ウォン(1660億円)へと23倍に増え、営業利益は15億ウォンから7382億ウォンへと492倍に急増した。
今年に入ってさらに勢いづいた。1-3月期(売上高1兆1791億ウォン、営業利益5763億ウォン)だけで昨年の年間業績の約70%となった。1-3月期の営業利益は「バイオ代表株」サムスンバイオロジクスの7倍にのぼった。韓国国内すべての企業を合わせてSDバイオセンサーより稼いだ企業はサムスン電子など16社だけだ。
診断業界は「コロナ特需」だけではSDバイオセンサーのカンタムジャンプを説明できないと「診断」する。チャンスはすべての診断会社に訪れたが、果実はSDバイオセンサーがはるかに多く握ったからだ。迅速な意思決定、価格競争力、果敢な設備投資が差をつけた要因に挙げられる。
◆診断キット販売世界1位
SDバイオセンサーは昨年2月から今年5月まで約7億個のコロナ診断キットを販売した。販売量基準で世界1位だ。業界では、2年前まで特に目立たなかった会社が一挙に世界トップになった秘訣に「迅速な新型コロナ対応」を挙げた。SDバイオセンサーは韓国国内で新型コロナの最初の感染者が確認される半月前の昨年1月5日、診断キットの開発に着手した。昨年2月に食品医薬品安全処の許可を受け、9月には世界で初めて世界保健機関(WHO)緊急使用承認も受けた。
迅速な対応を主導したのは創業者のチョ・ヨンシク会長だった。チョ会長はGC緑十字で10年間ほど診断試薬を研究した経験を生かして1999年に診断会社SDを設立した。SDは世界で初めてマラリア・鳥インフルエンザ・SARS(重症急性呼吸器症候群)診断試薬を開発し、市場を掌握した。コスダック市場上場初年度(2003年)90億ウォンだった売上高は2008年に400億ウォン台に増えた。他社の牽制が続き、結局、2009年に米アリーア(Alere)に買収された。
機会はまたすぐに訪れた。アリーアが無理な拡張による状況悪化でリストラに入ると、2011年にSDのバイオセンサー事業部門を買収した。チョ会長はまた手に入れたSDバイオセンサーの競争力を「他社より速い製品開発」と「信頼できる品質」と考え、ここに力を集中した。SDバイオセンサーが新型コロナ診断キットを早期に出せた秘訣だ。チョ会長は最近、記者らに対し「昨年初めに新型コロナが中国で広がると、数十億ウォンを投入して診断キット量産体制から準備した」とし「注文が入っていない状況での決断で市場を先に獲得することができた」と述べた。
◆「ネクストコロナ」の主力製品に注力
SDバイオセンサーはさらなる変身を準備している。未来のために次の主力製品の開発に移っている。SDバイオセンサーの今年1-3月期の売上高の90%以上は迅速免疫診断キットで発生した。この製品は30分以内に診断結果が出るという長所がある半面、正確度は80-90%という短所がある。
これを補完するために準備したのが現場分子診断(PCR)製品だ。7年間にわたる研究の結果を来月出す。遺伝子を増幅させて新型コロナ感染を検査するPCRキットは免疫診断キットとは逆に正確度は高いが迅速性が落ちる。遺伝子増幅から診断まで6時間ほどかかるからだ。SDバイオセンサーはこの時間を20-60分に短縮するのに成功した。正確度は従来の製品と同じく99%を超える。デング熱、HIV、インフルエンザなど11件の検査を同時にできるのもこの製品の強みだ。
チョ会長はこの製品で世界PCR現場診断市場を掌握する米セフィエドを超えるために勝負に出た。遺伝子を増幅するのに必要なPCR装備を世界全域の診断現場に無償で供給することにした。これにかかる費用は1000億ウォンと、チョ会長は説明した。チョ会長は「新型コロナ検査場所にSDバイオセンサーのPCR装備があれば関連診断キットは自ずと売れるはず」と話した。プリンターを低価格に普及させた後インクで稼ぐ方式のシステムを構築するということだ。
SDバイオセンサーは今月、有価証券市場に上場する。企業価値は6兆ウォン前後と予想される。5-6日に機関の需要予測を、8-9日に公募を進める予定という。