
佐藤天彦九段
プロの将棋界は、少年時代に「神童」と呼ばれたような才能の集まりだが、名人3期の実績を誇る佐藤天彦九段(33)も、まさに神童だった。後に弟子入りする中田功八段(54)と今から25年前、8歳の時に初対面すると、飛車・角を落とした二枚落ちで対戦し、なんと勝利した。中田八段いわく「負かそうと思ったら、吹っ飛ばされた」という内容で、佐藤九段も「こっちとしては勝って当然くらいに思っていた」から驚きだ。
【動画】入門時代を語る中田功八段と佐藤天彦九段
中田八段と佐藤九段は、「第1回ABEMA師弟トーナメント」にタッグを組んで出場。佐藤九段は名人3期のほか、各棋戦でも活躍するトップ棋士。中田八段は「君がいるから優勝が狙える。俺はプロになってから決勝ってものに行ったことがない」と、愛弟子とともに戦うことに熱く燃えている。大会前に収録されたチーム動画では、コロナ禍もあってなかなかゆっくり話し合う時間もなかった中、酒を飲みながら佐藤九段が弟子入りした当時のことを振り返った。
出会いは2人の故郷である福岡。将棋道場が2階にあるビルで、4階に中田八段の自宅があった。少年ながら、その才能が溢れていた佐藤九段を見て、道場の席主が4階の中田八段に連絡。「めちゃくちゃ二日酔いだった」が、2階に降りて佐藤少年と二枚落ちで指したところ、その強さに目が覚めたという。これをきっかけに、佐藤九段は中田八段に弟子入りすることになるが、中田八段は当時の思いとして「(師匠が)自分でいいのかっていうくらい。他の子たちとは(弟子を取る)意味が全然違ってくる」と、後にプロでも活躍することを確信していた。中田八段が「あんなにちっちゃい子を教えたのは君だけだね。教えがいもあった」と言えば、佐藤九段も「よく弟子に取っていただいた。自分が頼まれても取らないです」と笑っていた。
なお、振り飛車党の中田八段は、棋風が違う佐藤九段に対して「スタイルが逆。これは余計なことを言わない方がいいと思った」とアドバイスを控え、さらに佐藤九段が上京した後は「木村一基君と深浦(康市)君にかわいがってもらっていると聞いて『やった!』って感じだった。あの2人の恐ろしさをおれが一番知っている。あの2人との出会いこそが、めちゃくちゃすごかったと思う」と、将棋の研究を実力ある先輩棋士とともにできていたことに安心したというエピソードも披露していた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)