役所広司さん
3月11日に開かれた『第45回日本アカデミー賞』。多くの映画人が、受賞スピーチなどで東日本大震災から11年が経過したことやロシアによるウクライナ侵攻で脅かされている平和への想いを語った。その中で、映画『すばらしき世界』で「優秀主演男優賞」を受賞した役所広司さんの衣装に注目が集まった。 ウクライナ国旗の配色カラーのポケットチーフを身に付けており、「ウクライナカラー」などとSNSで称賛された。年に一度の映画の祭典・アカデミー賞。衣装を通じた発信からも「日米」での違いが見て取れる。【小笠原 遥/ハフポスト日本版】
【画像】さりげない心遣いが素敵すぎる…ウクライナカラーを取り入れた役所広司さんの姿
本人は言及せずも、SNSでは多くの称賛
授賞式では参加した俳優らが個性際立つ衣装でレッドカーペットを闊歩した。
男性の俳優陣は黒のスーツやタキシードを着用する人が多かったが、役所さんの衣装の胸ポケットには、さりげなくウクライナ国旗に使われている「青」と「黄」の配色のチーフが刺さっていた。
役所さんは授賞式や式に先立ってTVerで配信されたインタビューでカメラの前に立ったが、チーフについて自ら言及することはなく、インタビュアーも触れることはなかった。
だが、SNSではウクライナへのメッセージと受け取る人が多く、「何気ない行動にグッとくる」「さりげない平和への意思表示。そうした心遣いがなんとも言えずステキ」という称賛の声や「日本はこういう公の場で何かを主張する人(は)少ない」との意見が数多く寄せられた。
衣装を通じた社会への発信。米・アカデミー賞と比較すると…
俳優で歌手のビリー・ポーター
日本のアカデミー賞では、個人の俳優が衣装を通じて政治的なメッセージを表現する例はまだ少ない。
一方、米・アカデミー賞では毎年のように俳優陣のスピーチや衣装が話題となってきた。年に一度の映画の祭典で彼らが発信する政治や社会に対するメッセージは大きな注目を集める。
2019年には俳優で歌手のビリー・ポーターはタキシード・ドレスを装ってレッドカーペットに登場し、その姿が賞賛された。
同性愛者であることを公表しているポーターは「女性がパンツを履くのは男性的で、それは良くて受け入れられて、男性がドレスを着ると女性的でそれはダメ?もうそんな考えこりごりだ」とインタビューで語るなど、社会へのメッセージを衣装に込めていた。
日本アカデミー賞では、俳優陣だけでなく監督ら制作陣も思いを語った。
映画『すばらしき世界』で優秀監督賞を受賞した西川美和監督は、授賞式前のインタビューで「今日は3月11日ですし、11年前には大変なことがあった日ですし、世界の情勢も酷いことになっちゃって、こういう日に晴々しい賞を頂けることにはちょっと複雑な気持ちもあるのですが、少しでも世界がよくなるようにそういう祈りも込めて作った作品(でした)」とコメント。
東日本大震災とロシアへのウクライナ侵攻の話題について触れた上で、受賞について振り返っていた。
年に一度の日本映画の祭典。その場において、日本の映画作りに携わる人たちが社会や平和に対するメッセージを発信すること自体に大きな意味がある。
小笠原遥