元駐ウクライナ大使の角茂樹さん
ロシアとの停戦交渉を巡り、ウクライナのゼレンスキー大統領は「すでに占領された地域の帰属など重要な項目の決定については、国民投票を実施する必要がある」との考えを明らかにしました。緊迫する状況の中、国民投票を行うことは本当に可能なのでしょうか?ウクライナの実態と今後の注目ポイントを、元駐ウクライナ大使の角茂樹(すみ・しげき)さんに伺いました。
プーチン大統領「親ロシア系が迫害されている」、実際は?
元駐ウクライナ大使・角茂樹さんの略歴
角さんは、2014年~2019年まで駐ウクライナ大使を務め、歴史上初となる“日本の首相によるウクライナ訪問”を実現されました。そして在任中は、東部・紛争地帯を年に4~5回視察。多くの勲章を受章しています。
Q.角さんもキーウ(キエフ)に住んでいたということで、今は胸を痛めてらっしゃいますよね。
(元駐ウクライナ大使 角茂樹さん)
「キーウ(キエフ)というのは長い歴史があり、きれいな街なんです。これが今、どうなっているかというのは心配でしょうがありません。」
Q.プーチン大統領は「ウクライナ東部で親ロシア系の住民の人たちが迫害されて、ジェノサイドまで行われている」と言って攻め込んできているわけですが、そういう実態はありました?
(角茂樹さん)
「結論から言いますと、それは全くの嘘です。私は東部を訪れて住民の方と話をしたり、いろんな所を訪れて見聞きしたりしていますが、そんなものは見たこともないし聞いたこともありません。日本をはじめウクライナ政府は、東部でロシアの攻撃に遭った人を助けるということはやっていますが、その人たちを迫害したりジェノサイドするなんていうことはありえないし、全く聞いたこともありません。」
Q.東部の方だけではなくキーウ(キエフ)の方々をはじめ、ウクライナの方々はある意味、ロシアを兄貴分のように慕っていた、という部分もあるのですか?
(角茂樹さん)
「そうなんです。2014年まではそうだと思っていたんですが、2014年に突然、ロシアが東部に侵攻してきてクリミアを併合したということが、ウクライナの国民にとっては本当にショックだったんです。つまり兄貴分だったと思っていた人たちが侵攻してきて、しかも多くの人が殺されましたからね。それからロシアに対するウクライナ国民の考えは、全く変わりました。」