
記者会見で事故の経緯を説明する運航会社の桂田精一社長(左)=27日、北海道斜里町で
北海道・知床半島沖で遭難した観光船の運航会社「知床遊覧船」(北海道斜里町)の桂田精一社長(58)が27日に行った記者会見に対し、乗客の家族らは「安全を守る自覚が感じられない」と怒りをあらわにしている。事故では11人の死亡が確認され、15人が行方不明のままだ。捜索が続くなか、地元は本格的な観光シーズンを迎える。
死亡が確認された佐賀県有田町の岩永健介さん(74)の義弟、古川法秋さん(69)は、桂田社長の記者会見をラジオで聞いた。「大変申し訳ございません」と謝罪の言葉を聞いたが、「謝ってもらっても、優しい兄貴はもう帰ってこない。あんな船に乗ったばかりに……」と涙をぬぐった。
会見では、観光船と交信する会社の無線アンテナが壊れていたことや、強風と波浪の注意報が出ている中での出航など安全管理態勢のずさんさも明らかにされた。特に怒りがこみ上げたのは、「事故原因が分からない」とした社長の言葉だ。「欠陥が多すぎる。起こるべくして起こった事故だ」と強い口調で語った。
長女と孫が行方不明となっている北海道帯広市の男性(69)も、テレビで記者会見を見て、「到底納得できる説明ではなかった。あんな記者会見では意味がない」と憤った。
事故当日の23日朝に船長から「出航は可能」との報告を受け、「海が荒れるようであれば引き返す条件付きの運航とすることを決めた」という説明に、「どんな理由があっても最終的には社長に責任がある。自覚が感じられない」と話した。
男性は28日から知床半島に入り、現地で家族の発見を待つ予定だ。難航する捜索に「なかなか進展がないね」と言葉を詰まらせた。
「ご遺族は悲嘆」…小池さんの勤務先
観光船事故で死亡が確認された福島県会津若松市の小池駿介さん(28)が取締役を務めていたリオン・ドールコーポレーションが28日、「ご遺族は、事故により大切な家族を突然失い、悲嘆に暮れている」とコメントを発表した。
同社は福島県を中心にスーパー約70店を展開する会社で、社長の長男の小池さんは将来を嘱望されていた。当時は北海道に出張中で、週末を利用して知床を訪れていたという。