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島根県隠岐の島町の海岸には、多くの漂着物が打ち上げられていた
日本海に浮かぶ島根県隠岐(おき)諸島の沿岸には、流木や漁具、プラスチック類など大量の海岸漂着物が押し寄せる。日本はもちろん、中国、韓国などのゴミの中に、北朝鮮からの漂着物も交じる。北朝鮮は新型コロナウイルス対策で2020年初めから国境封鎖を行い、事実上の鎖国状態。交易が止まった経済難で、食料や生活必需品が不足していると伝えられる。その困窮は、隠岐にたどり着いたペットボトル類からも、おぼろげながら推測できた。
【写真】北朝鮮から漂着したペットボトルなど
■激減したペットボトル
8月上旬、隠岐諸島最大の島、島後(どうご)(隠岐の島町)。島の北西部には、ゴツゴツとした石の海岸が広がっている。流木や漁具などの漂着物が数キロにわたって山積しており、歩くのも困難だ。
「あ、ありました。これは北朝鮮のペットボトルですよ」
この島に住む50代の男性が、声を上げる。ラベルに記されたバーコードの国番号が北朝鮮を示すものだった。男性は10年ほど前から漂着物に興味を持ち始め、近年は北朝鮮からのペットボトル類をウオッチ・収集し続けている。
朝鮮語も独学で身に付け、文字の識別もできるようになったという。
「ラベルにどんぐり焼酎と書いてあります。お酒のペットボトルのようですね」
男性はこの海岸を「北の漂着物の名所」と呼び、定期的に訪れては漂着物を確認する。以前は大量のペットボトルが漂着していたためだ。しかし、今回は炎天下に1時間以上、海岸を歩いたが、見つかった北朝鮮のペットボトルは結局2本だけだった。
「やはり、新型コロナウイルスの感染拡大前に比べると、激減している」。汗をぬぐいながら、男性は話した。
■コロナ禍の鎖国影響か
男性によると、北朝鮮のペットボトルを、島後で最初に確認したのは、平成28年2月。翌年からは大量に漂着するようになり、最盛期は31年1~2月。45リットルのごみ袋2袋分が、ペットボトルで満杯になったという。
「おそらく、北朝鮮でペットボトル飲料が流行したのではないか。2015(平成27)年ごろから経済が回りだし、ペットボトル飲料も作り始めたのでは」と男性は推測する。
北朝鮮のペットボトルのラベルは、飲んだ際の効果を誇張して書いてあるものが多かったという。例えば、ヨーグルト飲料には「背が伸びる」。朝鮮半島の醸造酒、マッコリには「皮膚によく、がんが治る」などと書かれていた。「書いたもん勝ちのところがあるのでしょう」
それが、令和2年の冬から、ぱったりと減少しだした。前年12月に、中国で新型コロナウイルスが確認され、この年の1月から、北朝鮮は陸路・海路とも他国との行き来を中止。貿易も止まったとされる。
「ペットボトル用の樹脂も入ってこず、製造のしようがなくなったのだろう」と男性は言う。現在では、半日かけて島後の海岸をめぐっても、コンビニの買い物袋1つにも満たない量しか収集できない。
■エコ意識も高まる?
隠岐の島町環境課によると、毎夏行う漂着物の収集作業で、町の北西部にある五箇(ごか)地区では今年も約243立方メートルのごみが収集された。昨年は約209立方メートル、一昨年は約193立方メートルとその量は膨大だ。
五箇地区のなかでも男性が「北の漂着物の名所」とする海岸がある地域の沿岸では、昨年は約100立方メートルで、一昨年は約112立方メートルの漂着物があった。
担当者は「国外からと見られる漂着物は多いが、国別に量っている訳ではないので、北からの漂着物が減少したかどうかは分からない」と説明する。
ただ、男性によると、昨年前半くらいまでの製造日時が記されたペットボトルは複数見つかっているが、今年に入って製造されたと確認できるペットボトルは1本だけ。「パイナップル牛乳と記されたラベルのもので、おそらく北の富裕層が飲んで捨てたのでしょう」。
男性が見つけたペットボトルは、本体とキャップの色が異なっていたり、ジュースのペットボトルの中身を確認するとアルコールの匂いがしたりするものもある。ペットボトルの流通が激減し、一般市民は貴重なペットボトルを他の飲料を入れるなど再利用していると見る。
これは、同時に打ち上げられている歯磨きチューブでも、人が手を加えて別の用途のために加工した後があり、物資不足がうかがえるという。
また、意外なリサイクル意識の高まりも読み取れた。2022年3月に製造したと読み取れるペットボトルには、日本でもおなじみのリサイクルマークが描かれていた。
日本製ならプラスチックの『プラ』と書かれている場所に「ビニール類」と記されている。
男性は「以前のものは、人がごみを捨てるピクトグラムが描かれているものが多いので、北にもエコ意識が入ってきたのかもしれない」と推測していた。
外部からはなかなかうかがい知れない北朝鮮の実情。男性はこう言う。「内部がどうなっているか分からない中で、漂流してくるごみが、真実の一端を伝えてくれる」(藤原由梨)
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