「なぜ安倍元首相の国葬費用はエリザベス女王より高い?」、日本で話題に
大井真理子、BBCニュース
「エリザベス女王の国葬費用『13億円』…安倍元首相は16億円で『泣けてくる』声」。週刊誌記事のこの見出しが、日本で話題になっている。
イギリスで行われたエリザベス女王の国葬費用は、今のところ明らかにされていない。それでも日本の写真週刊誌FLASHは、英紙デイリー・ミラーが報じた推計800万ポンド(約13億円)という金額を引用し、日本政府が公表した安倍晋三元首相の国葬費用の概算16億6000万円と比較している。
ソーシャルメディアではすでに多くの人が、東京五輪も招致段階の予算から2倍近くかかったことを例に挙げ、「16億なんて信じない。最終的には40億とかになるんじゃない?」などと書いている。また「国葬費用の差は中抜き業者のせい?」というコメントも多く見られる。
今月初めには、国葬の演出業務について一般競争入札に参加したのが1社のみで、都内のイベント会社ムラヤマだったと報道され、批判が集まった。ムラヤマによる落札価格は1億7600万円だという。
ムラヤマは過去に安倍氏主催の「桜を見る会」でも、会場設営業務を担った。かつて「桜を見る会」には安倍氏の後援会関係者が多数招待されていたことから、公費の私物化ではないかと問題になった。
共同通信による17~18日の世論調査では、国葬の費用約16億6000万円について、72.5%の人が「妥当ではない」と答えている。
日本政府が発表した概算によると、警備に8億円程度、外国要人の接遇に6億円程度が見込まれている。
27日の国葬前に、岸田文雄首相は3日間にわたる「弔問外交」を始める。アメリカのカマラ・ハリス副大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相など、217国から700名程度が来日予定だ。
しかし、ジョー・バイデン米大統領など各国の現職トップが大勢参列したエリザベス英女王の国葬と、海外要人の顔ぶれを比べる声も多い。
日本でも大きく報道されたイギリスの国葬は、英国民の悲しみとエリザベス女王への親愛の情を浮き彫りにした。その様子をテレビなどの画面越しに見た日本の大勢にとって、安倍氏の国葬をめぐる日本国内の空気との落差は歴然としていた。
岸田内閣は、安倍元首相の国葬を執り行うことを決定した際、首相在任期間が憲政史上最長の8年8カ月にわたることを挙げた。総理大臣経験者の国葬は、1967年の吉田茂氏に続く2例目。
当時の経費は1809万6千円で、消費者物価指数を基に計算すると、現在の貨幣価値で約7000万円相当だと日本のメディアは報じている。
原材料価格の上昇と円安の影響で消費者物価が約31年ぶりの最高値を記録する中、打撃を受けている国民の生活を支援するために予算を使うべきだという批判もある。
国葬実施への反対が高まるにつれ、岸田政権の支持率急落には拍車がかかっている。
安倍氏の在任中、多くの政策について賛否が割れた。その死後も、安倍氏をめぐる世論の分断が薄れる様子はない。
(英語記事 Abe funeral: Japan asks why state event is costing more than the Queen’s)
(c) BBC News