【ニューヨーク=平田雄介】ロシア、中国、インドの外相が24日、ニューヨークの国連総会で演説した。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、インドは途上国を牽引(けんいん)する立場から食料危機やインフレなどの影響に懸念を示し、ロシアへの不快感を表明。中国も戦闘長期化に懸念をにじませた。一方、露外相は、台湾情勢で中国、国連安全保障理事会の改革でインドを支持する立場を強調し、秋波を送った。国連外交筋は「中印のロシア離れを防ぐ狙いがあるのだろう」と話している。
■インド「戦争と紛争の時代ではない」
インドのジャイシャンカル外相は演説で「生活費の上昇や、燃料や食料、肥料の不足は、ウクライナ紛争の結果だ」と指摘し、「南の途上国が最も打撃を受ける」と危惧を示した。ロシアの侵攻をめぐるインドの立場について従来どおり直接の対露批判を控える一方、「今は戦争と紛争の時代ではない。開発と協力の時代だ」と強く訴えた。
ジャイシャンカル氏はまた、「インドは25年以内に先進国になる」との目標を語り、日本やドイツ、ブラジルとともに常任理事国入りに名乗りを上げる安保理改革でも本格的な交渉を始めるべきだと訴えた。
■中国「危機解決の努力支持」
中国の王毅外相兼国務委員も、貧困の撲滅と開発を「国際的課題の中心に据えるべきだ」と述べ、途上国への中国の支援実績をアピール。食料やエネルギー価格の高騰など地球規模で余波が広がる「ウクライナ危機の解決に向けた建設的な努力を支持する」と訴えた。
王氏は、台湾情勢について「中国が完全に統一されて初めて、台湾海峡に真の平和が訪れる。外部の干渉に対抗するために、最も強力な措置を取る」と述べた。中国が侵攻すれば台湾を防衛するとしたバイデン米大統領の発言などを念頭に米国を牽制(けんせい)した。
■露はインドとブラジルの常任理事国入り支持
王氏の後に登壇したラブロフ露外相はウクライナを支援する米国を非難する中で「米国は台湾で火遊びをしている。何よりも軍事支援を約束している」と中国に加勢した。
ラブロフ氏は、インドが唱える安保理改革についても、「インドとブラジルは特に常任理事国にふさわしい」と語った。
ラブロフ氏は演説後の会見で「日本とドイツは西側諸国で、(途上国などからの代表を増やす)ロシアの改革意図にはそぐわない」と述べた。発言には日独とインド、ブラジルを分断する狙いもありそうだ。