ロシアのタカ派、ウクライナへの報復攻撃に歓喜


ロシアのタカ派、ウクライナへの報復攻撃に歓喜

ロシアのタカ派、ウクライナへの報復攻撃に歓喜

ウクライナ各地で10日朝、ミサイルが無差別に降り注いだ。クリミアの橋が攻撃されたことに対する、ロシアの残忍な仕返しだった。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今回の攻撃について、ウクライナによる「テロ行為」に対応したものだと述べた。

しかしそれは同時に、プーチン氏支持のタカ派への対応でもあった。タカ派は、この戦争におけるロシアの損失にいら立ちを強めており、より厳しい行動が必要だと声を大きくしている。

数日前まで落ち込んでいた親クレムリン(大統領府)の高官やテレビ司会者たちは、今や隣国への攻撃に歓喜している。ウクライナの人々が死者を悼み、複数の攻撃の残骸から大切なものを拾い集める中、それらロシア人はソーシャルメディアの投稿でいい気味だと言い、踊りさえしている。

今回のミサイルによる集中砲火は、ロシアのセルゲイ・スロヴィキン将軍の初仕事の日に実施された。

同将軍は現在、ロシアの軍事作戦の責任者となっている。プーチン氏は先週末、強硬派をなだめるために彼を任命したのだった。

同将軍はこれまで、シリアへの無差別爆撃や、1991年にモスクワで起きたクーデター未遂での民主化運動参加者の死亡などに関わってきた。そのため、前々から冷酷と評されていた。

10日朝の攻撃は、その評判どおりのものだった。

8日にクリミアの橋が攻撃されると、戦争の進み具合に対するロシアの動揺はピークへと達した。

ロシアは2014年にクリミアを不法に併合し、ロシアの一部だと主張している。そのシンボルがこの橋だった。それが炎上したことで、この戦争で最も声の大きい強硬派の人々が、報復を強く求めていた。

強硬派は以前から、公共インフラへの攻撃を訴えていた。ウクライナ兵を戦場で倒せないなら、ウクライナ国民をこの冬、凍えさせて服従させようという考えだ。

政府のプロパガンダを広めているウラジーミル・ソロヴィヨフ氏は、「いつ実際に戦い始めるのか」と問い、ロシアは笑われるより怖がられる方がいいと主張した。

そのため、クレムリンに忠実な人々は10日、祝賀ムードに浸った。

ロシア・チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフ氏は「100%幸せだ」と発言した。彼はここ何週間か、ロシア国防省を激しく批判していた。

国営テレビRTのマルガリータ・シモニャン編集長は、クリミアの橋の攻撃を「レッドライン」(越えてはならない一線)と定義。その上で、ロシアの「ささやかな反応が着地した」と優しく語った。

RTのベテラン従業員のアントン・クラソフスキー氏は、戦争支持のシンボル「Z」の文字が入った帽子と、ロシア軍のパジャマと思われるものを着て、カメラに向かって踊りながら大きな笑顔を見せている動画を投稿した。冒頭、彼は拳を突き上げており、勝利を喜んでいるように見える。

しかし、民間人を殺し、家々を破壊し、公園や遊び場を破壊した今回の「衝撃と畏怖」攻撃は、ロシアの弱さが出発点となっている。ロシア部隊は戦場で敗退を続けているのだ。

プーチン氏は、ロシア軍が負け出すと、戦いを長引かせるかのような動きを見せた。おそらく、冬になってウクライナの西側同盟国が国内での政治的圧力から支持を弱めるまで、戦場で持ちこたえようと考えたのだろう。

そうなれば、ロシアは話し合いへの圧力をかけることができる。紛争の凍結だ。

しかし、ウクライナ軍は前進を続けており、士気も高いままだ。ロシアがウクライナの4州を不法に併合した後も、それは変わっていない。

そうした状況で、ロシア強硬派の不満が爆発した。

強硬派は慎重に、批判の矛先をプーチン氏ではなく、軍部にだけ向けている。しかしこれはプーチン氏の戦争だ。彼が始めたのであり、彼はロシアの最高司令官だ。

モスクワ社会経済科学大学院のグリゴリー・ユーディン氏が、10日の大規模な砲撃について、プーチン氏の内輪の問題を解決することを主な目的とした「苦肉の策」だったと表現したのは、まさにそれが理由だった。

ユーディン氏はツイッターで、相手を降伏させるには「死ぬほど怖がらせる」必要があるとするタカ派の考えを、プーチン氏は受け入れたと書いた。

ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ前大統領(かつてはリベラル派と見られていた)は、今回の攻撃は「最初のエピソード」にすぎず、今後も続くと警告した。

プーチン氏自身は、橋の攻撃のような「テロ行為」が続けば、ロシアは「非常に厳しい方法で」対応すると述べている。

こうした発言は、この戦争の暗く、新たな展開を示唆しているのかもしれない。より無差別で壊滅的な攻撃が増えることも懸念される。

「ロシア指導層は消耗戦の準備ができているのではないか」。ロシア外交政策のアナリスト、アンドレイ・コルトゥノフ氏はBBCにそう話した。

「ロシア側は、ウクライナの国民と軍の意志を砕きたいと思っている。それは、重要インフラへの激しい攻撃を意味する」

しかし、ウクライナは侵攻から7カ月以上たっても、屈する気配をまったく見せていない。マリウポリでの包囲や、ブチャやイジュームでの拷問や処刑といった恐怖を経験したにもかかわらずだ。

「この理論は、ウクライナには当てはまらない」と、前出のユーディン氏は書いている。「しかし、タカ派はまだそれを学んでいない」。

(英語記事 Russian hawks celebrate deadly response to setbacks)

(c) BBC News



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