ロシア国旗
ウクライナ南部ヘルソン州の併合を一方的に宣言したロシアは、州内を流れるドニエプル川の西岸地域から東岸地域への部隊や装備の撤退を開始した。ウクライナ軍が21日、交流サイト(SNS)で発表した。ウクライナ軍は露軍が撤退に使用する船舶にウクライナ国民を乗せ、「人間の盾」にしていると非難した。
【写真】ウクライナ南部クリミア半島に到着したヘルソン州からの避難民ら
同州でウクライナ軍は、ドニエプル川に架かる橋を米高機動ロケット砲システム「ハイマース」で破壊。州都ヘルソン市など同川の西岸地域では最大2万5千人の露軍部隊が補給を断たれ、孤立しているとされる。露軍のスロビキン総司令官は18日、西岸地域を放棄する可能性を示唆。同州の親露派勢力も住民や行政機関を東岸地域へ退避させると発表していた。
ウクライナ軍によると、露軍は撤退の時間を稼ぐため、動員した2千人の招集兵を前線に配備。ウクライナ軍参謀本部は22日、露軍がヘルソン市で市街戦の準備をしていると発表した。
ヘルソン市はロシアが併合を宣言した東・南部4州の州都のうち、ウクライナ侵略の開始後に露軍が制圧した唯一の都市。同市を喪失した場合、併合の稚拙さが浮き彫りとなり、プーチン政権への打撃は必至だ。
ウクライナ軍は20日、ヘルソン州でこれまでに計88カ所の集落を露軍から奪還したと発表した。
一方、ロシアの同盟国でウクライナの北方に位置するベラルーシがウクライナ侵略への参戦を示唆している問題で、英国防省は21日、現時点でロシアとベラルーシにウクライナ北部に侵攻する戦力はなく、ウクライナ軍の戦力分散を狙った陽動戦術の可能性が高いとする分析を公表した。戦争研究所も20日、同様の見方を示し、「ロシアがウクライナ北部に再侵攻する可能性は低い」と指摘した。