ゼレンスキー大統領(桐原正道撮影)
ロシアの侵略を受けるウクライナの前線から数百キロ離れた露西部モスクワ州に接するリャザン州と南西部サラトフ州の軍用飛行場で5日朝、爆発が起き、燃料タンク車などが炎上した。複数の露主要メディアが伝えた。露国防省は爆発について「旧ソ連製の無人航空兵器」によるウクライナ軍の攻撃だったと指摘。撃墜に成功したものの、露軍人7人が重軽傷を負い、航空機2機が軽い損傷を受けたと主張した。
【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地
ウクライナは軍用飛行場への攻撃について否定も肯定もしていない。ただ、同国メディアは、同国軍の新型ドローン(無人機)による攻撃だった可能性があると指摘。損傷したのは露軍の長距離戦略爆撃機「ツポレフ95」だとも伝えた。
ウクライナが長距離攻撃能力を獲得した場合、露国内の軍事施設への攻撃が増加し、戦況は新たな局面に入る可能性がある。
一方、露軍は5日午後、ウクライナ各地の電力インフラなどに大規模なミサイル攻撃を行った。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日のビデオ声明で、露軍が発射した70発のミサイルのうち、大半を撃墜したが、一部が着弾して4人が死亡したと発表。電力インフラの損傷により各地で停電が発生したとし、復旧を急いでいると表明した。
声明でゼレンスキー氏は、米欧諸国からの防空システムの供与に謝意を表明。その上で「平和をもたらすものは、ロシアのテロ能力の解体とわが国の全領土の解放、殺人者の責任を問うことだ」と強調した。
露軍は10月以降、ウクライナの電力インフラに対するミサイル攻撃を激化。ロシアはウクライナ軍の兵員や物資の輸送を妨害して戦況を改善するとともに、厳冬期を前に同国民から電力を奪い、抗戦意欲をくじく狙いだとみられている。
戦時国際法であるジュネーブ条約は、民間人保護の観点から電力など民間重要インフラへの攻撃を禁じており、欧米やウクライナは「インフラ攻撃は国際法違反だ」と非難。しかしロシアは「兵器や兵員の輸送に関係している」と主張し、攻撃を正当化している。