日本では人口減少を背景に、中長期では15~64歳の生産年齢人口の大幅な減少が見込まれる。人口が減る中でも経済成長を維持するためには、社会保険料の負担増を抑えて消費に回るお金を増やしたり、働き方改革で労働の効率を高めるなどの取り組みが課題だ。
内閣府の推計によると、日本経済の実力を示す「潜在成長率」は平成31年1~3月期に1・1%と低水準で推移。労働力の供給を示す「労働投入量」の寄与は0・5ポイントで、人口減少で働き手が減れば労働力の供給の寄与が小さくなり、経済成長を制約しかねない。
一方、大和総研の神田慶司シニアエコノミストによると、昭和43年度と50年後の平成30年度を比べると、日本の人口は約1・25倍だが、1人当たり実質国内総生産(GDP)は3・04倍となった。神田氏は「人口が減れば経済成長できないというのは言い過ぎだ」と指摘。人口減少の中でも経済成長を維持する方策として「社会保障費の効率化で現役世代の社会保険料の負担増を抑えれば、消費などにお金を使いやすくなる。働き方改革など働く意欲のある人を後押しする環境整備も必要だ」と強調する。
政府が6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」や新たな成長戦略では、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とすることや、30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代の正規雇用者の拡大などを明記し、潜在的な働き手の掘り起こしを打ち出している。(森田晶宏)