人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

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ウクライナでは人道物資の盗難が相次いでおり、ポーランドと国境を接するリヴィウ州では米支援団体が送った約1万個の米軍応急処置キットが姿を消し、コジツキー知事が捜査を指示したものの人道物資の盗難にはリヴィウ州当局者が関わっている可能性がある。

リヴィウ州は支援物資の盗難や違法出国に関連した闇ビジネスの最前線

リヴィウ州のマクシム・コジツキー知事は27日「現地メディアが米国からの人道援助がリヴィウ州で紛失したと報じ、特に米軍応急処置キットが消えたことは人道物資の盗難かもしれない。応急処置キットがウクライナ領に持ち込まれたのか、もし持ち込まれたなら何処に消えたのか、約1万個の応急処置キットが消えて無くなることはあり得ない。私は検察と警察に事実を確認するよう指示した。もし報道の内容が事実なら罪を犯したものは裁判にかけられるべきだ」と発表したが、この件はリヴィウ州自体が関わっている可能性が高い。

この話を出来るだけ短く端的に説明すると以下のようになる。

ウクライナ侵攻を受けてウクライナ系米国人は祖国を支援する活動を開始、その中でも最大の組織がフィラデルフィアに拠点を置く「統一ウクライナ系米国人援助委員会(UUARC)」で、これまでにコンテナ30個分以上の人道支援物資をウクライナに送り、UUARCと協力関係にあるリヴィウ州の慈善団体「ボランティアと保護センター」が物資の分配や配送を請け負っていた。

人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

出典:United Ukrainian American Relief Committee, Inc. UUARCが人道支援としてウクライナに送った発電機

コンテナを米国からウクライナのリヴィウ州まで輸送するには8,000ドル~10,000ドルの費用が必要で、2022年10月にリヴィウを拠点とする慈善団体「インテリジェント・オーガニゼーション」のリリヤ・タシュチュクという人物が「我々はリヴィウ州当局と協力しており、支援物資の輸送費を負担できる」とUUARCに話を持ちかけ、両者は「リヴィウ州当局の資金でコンテナを輸送し、人道支援物資をボランティアと保護センターに届けること」で合意。

輸送費を負担しなくてもいいコンテナの第一弾にはガスマスク、寝袋、冬服、靴といった物資の他に、ウクライナ軍が必要としている米軍応急処置キットが含まれており、これを9,700個も調達するのにかかった費用は90.8万ドル(コンテナの中身で最も高価な支援物資)で、10月14日に米国から発送されたもののインテリジェント・オーガニゼーションからは何の報告もなく、リヴィウ州当局が11月8日に発表したプレスリリースでコンテナの中身が約束された「ボランティアと保護センター」ではなく「リヴィウ州当局の倉庫」に直接配送されたこと知る。

人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

出典:U.S. Air National Guard photo by Airman 1st Class Constantine Bambakidis Improved First Aid Kit

UUARCは自分達の支援物資について調査を開始し、ポーランドの国境検問所に持ち込まれた支援物資は税関職員によって登録されているのを確認、しかしウクライナの税関職員は「そんな荷物は知らない」と主張、さらにコンテナに積み込まれていた支援物資の幾つかは「未知の方法」でリヴィウ州当局の倉庫で到着していたことを確認したが、最も高価な米軍応急処置キットは何処かに消えてしまった。

腐敗防止のためウクライナ人ジャーナリストが設立したNGL.mediaは「インテリジェント・オーガニゼーション関係者(Facebookの投稿内容から同団体の関係者は全て米国に滞在していた可能性が高い)」との接触を試みるも入手した電話番号は繋がらず、何度も送り付けた質問状は全て無視され、この団体から事件を解明するのは困難だったもののリヴィウ州当局が使用していた別の倉庫に「米軍応急処置キットが存在していた」という証拠を入手、さらに手に入れた輸送書類によってリヴィウ州当局が「グリーン・キーウ」という慈善団体に人道物資を移送していたことも確認。

人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

出典:Генеральний штаб ЗСУ バフムートで戦う兵士の様子

戒厳令が発令されているウクライナでは男性(特に動員の対象者)の出国が厳しく制限されているが、この抜け穴に利用されているのが人道物資の受け入れに携わる慈善団体関係者への出国許可書(通称:シュリャフ・システム)で、リヴィウ州当局は活動実態のない怪しげな慈善団体(約1,800団体)にシュリャフ・システムを通じて3万2,000件以上の出国許可書を発行しており、最も多くの出国許可書(385人分)を発行されたのがグリーン・キーウだ。

NGL.mediaはグリーン・キーウについて「連絡先すら公表しておらず、この団体を経由して出国許可書を取得したウクライナ人男性達(団体の創設者を含む)は出国したまま戻ってこない。この団体は現在如何なる活動もしてない」と述べており、グリーン・キーウに引き渡された応急処置キットが何処に消えたのかは分かっていない。

人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

出典:Андрій Годик

NGL.mediaの取材に応じたリヴィウ州のアンドリー・ゴディク副知事は「UUARCの人道支援物資が未知の方法で運び込まれた倉庫はリヴィウ州当局のものではなく、シェフチュク氏が所長を務めていた人道支援調整センターのもので、この組織は州当局の正式な組織として登録されていないため、そこで起こったことにどんな行政責任も負わない」と主張している。

しかしゴディク副知事は「なぜリヴィウ州当局のホームページに行政の関連団体として人道支援調整センターが紹介されているのか」「なぜシェフチュク氏はリヴィウ州当局の人道支援責任者として紹介されているか」を説明できなかったとNGL.mediaは報じており、ゴディク副知事は後日「リヴィウ州当局とシェフチュク氏の間で協力が行われていた」と認めたが、人道支援調整センターを通じてではなく「グリーン・キーウを通じてのもので、シェフチュク氏はそこの代表だった」と述べており、リヴィウ州当局の誰かがグリーン・キーウを利用して闇ビジネスを行っている可能性が高い。

人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

出典:ЛЬВІВСЬКА ОБЛАСНА РАДА リヴィウ州当局の公式YouTubeに登場する シェフチュク氏

経緯の説明が非常に長くなったが、ポーランドと国境を接するリヴィウ州は西側諸国のあらゆる支援が流れ込む最大の経由地で、違法に国境を越えようとするウクライナ人も集まりやすく、支援物資の盗難や違法出国に関連した闇ビジネスの最前線であり、これに複数の州当局者が深く関与している可能性が高いためリヴィウ州の検察と警察だけでは闇が深すぎて手に負えないかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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