<維新とカネ>松井前代表を刑事告発 無断で誓約書に他人の署名・捺印 「遵法精神ゼロの悪質な犯罪。説明責任果たせ」と専門家

「身を切る改革」をうたう維新だが、カネの問題が尽きない。刑事告発された元日本維新の会代表・松井一郎氏とは?

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◆私文書偽造罪・同行使罪及び収支報告書虚偽記入罪で大阪地検に告発

今年4月の統一地方選挙を機に政界を引退した松井一郎氏(前大阪市長、日本維新の会前代表)が代表を務める政治団体「松心会」が、元会計責任者に許諾を得ず勝手に政治資金収支報告書(以下、収支報告書)の誓約書に署名・捺印をしていた問題で、松井一郎氏ら2人が私文書偽造罪や虚偽記入罪などで、5月に大阪地検に刑事告発されていたことが分かった。これはフリージャーナリスト・鈴木祐太氏による報道である。

◆無断で会計責任者の署名・捺印続ける

刑事告発を行ったのは神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏である。告発状によると、会計責任者Aさんは松井一郎氏の父親である良夫氏の代からの長年の支援者であり、その縁で「松心会」の会計責任者を引き受けていた。しかし、松井一郎氏が橋下徹氏らと「大阪維新の会」を立ち上げ自民党を離党したことをきっかけに支援を終了し、会計責任者を辞めたという認識を持っていた。しかし、現在、インターネット上で公開されている「松心会」の収支報告書の表紙には、会計責任者であるAさんの名前が記載されており、さらに収支報告書に宣誓する「宣誓書」の欄には、Aさんの署名・捺印がされているというのだ。

会計責任者Aさんは週刊ポストの取材に対し、「会計責任者は既に辞めているはずだった。ハンコは預けたままで、署名は事務所が代筆したものだと思われる。私は全く知らない」と答えている。

◆「政治資金規正法上の問題ない」とあきれた回答

松井事務所はこの報道に対し、「署名・捺印については、松心会の事務職員が20年以上にわたり代筆・捺印してきた。その際にAさんに確認せず続けてきたが、政治資金規正法上の瑕疵はないと考えている」と週刊ポストに回答している。私も松井一郎氏の事務所に公式サイトを通じて質問をしたが、回答はなかった。

この告発について上脇教授は次のように怒りをあらわにしている。「会計責任者は政治団体の政治資金の収入・支出について会計帳簿を作成して管理する責任者です。だからこそ、その会計帳簿に基づき、会計責任者は収支報告書を作成する義務を果たすことができる。しかし、松心会の松井一郎代表は、会計責任者が事務所に出入りせず、会計帳簿を作成していないにもかかわらず、代わりの会計責任者を任命せず、事務所の職員と共謀して無断で収支報告書に署名・捺印していたことになる。Aさんが嘘をついているとは思えないし、松井事務所も勝手に署名・捺印をしたことを認めている。遵法精神に欠け極めて悪質な犯罪だから、私はスクープ報道後の5月下旬に私文書偽造罪・同行使罪及び収支報告書虚偽記入罪で大阪地検に松井代表ともう一人(氏名不詳)を告発した」としている。

◆維新の「身を切る改革」とは何なのか?

大阪府選挙管理委員会による情報公開により、5月16日付の資料から、「松心会」は会計責任者を変更していたことが明らかになった。週刊ポストの報道後、提出された訂正願いは会計責任者の変更に限られていたと判明した。これによって、「松心会」が自民党を離党してからAさんの許可を得ずに捺印していた問題には修正の必要がないとされている。

上脇教授はこの訂正について次のようにコメントしている。「過去の収支報告書には事務担当者の記載はない。収支報告書に記名・署名された会計責任者を訂正すると、松井代表と共謀した人物を“自白”することになるから訂正されなかったのだろう。『松心会』という政治団体は『松井一郎後援会』と事務所の所在地が同じなので、その後援会の誰かが松井代表の共犯者だった可能性がある。しかし、松井代表はまだ詳細な説明をしておらず、説明責任を果たしていない。このような無責任な人物が府知事や市長だったのだから呆れる。これが維新の政治的体質なのでしょう」。

維新の会が掲げてきた「身を切る改革」とは一体何だったのでしょうか。

Writer: 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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