「訪日キャンセル続出」の中国報道に疑問 国内旅行会社「影響軽微」処理水影響、過大喧伝か

中国報道による「訪日キャンセル続出」に疑問の声

中国からの報道によると、東京電力福島第1原発からの処理水海洋放出により、中国人の訪日旅行に影響が出ていると言われているが、国内の旅行会社は「影響はあまり感じていない」と口を揃えて言っていると産経新聞が報じた。この報道に対し、専門家は中国政府の意図により、影響が過大に喧伝されている可能性があると指摘している。

中国報道と国内旅行会社の見解が対照的

中国の現地メディアは「キャンセル続出」と報じているが、国内の旅行会社は実際のところ影響はほとんど感じていないと語っている。中国政府の政治的な意図に影響を受けた現地メディアが、過大に報じている可能性があると専門家は指摘している。

「あたかもキャンセルが続いているかのように報じられるのは迷惑だ」と国内旅行会社の担当者は話している。

国内旅行会社の見解とは対照的に、中国メディアの報道は大きな影響を与える

処理水放出が始まった後、中国メディアは「核汚染水の放出」「訪日キャンセル続出」と盛んに報道している。斉藤鉄夫国土交通相もキャンセル事例が報告されたことを明らかにしたが、調査対象の会社によっては問い合わせがなかったとの報告もある。このため、影響の程度についてはまだ明確ではないと述べている。観光庁幹部は、「中国側の報道については冷静な判断が必要」とコメントしている。

国内の旅行会社の声

産経新聞が中国人観光客の受け入れ業務を担う国内の旅行会社に取材したところ、ほとんど影響はないとの回答がそろった。少数のキャンセル事例があったとしても、全体から見ればごくわずかなものだと話している。

中国からの迷惑電話も報告されているが、別の旅行会社の担当者は、「訪日旅行を計画できるのは基本的に富裕層であり、迷惑電話をかけている人たちとは明らかに異なる」と述べ、影響は限定的だと考えている。

中国側の姿勢に変化の兆し

中国共産党の機関紙である人民日報系の環球時報は、国民に冷静な対応を呼びかける社説を掲載し、行き過ぎた反応を抑制する狙いがあるとみられる。

訪日ニーズは続くか

昨年の新型コロナウイルスの水際対策緩和以降、中国人の訪日客は増加しており、8月には日本への団体旅行も解禁された。また、9月末からは中国で国慶節の大型連休も控えており、旅行会社関係者からは事態の収束を期待する声が上がっている。

事態の背景について

九州大学大学院の益尾知佐子教授(国際関係学)によると、中国は長期独裁や経済失速など、国内の不満を外に向けるための材料として処理水放出が利用されているとの見方がある。