スウェーデン、ウクライナへのグリペン提供を検討 NATO加盟後の条件から政治膠着状態へ

ウクライナからグリペンの提供を要請されているスウェーデンは、NATO加盟後に慎重な検討を行うと発表しました。一方、米上院はトルコへのF-16Vの売却を承認しないとしており、トルコはそれに対抗して批准しないと主張しています。この複雑でややこしい状況については、もう訳が分からないと言わざるを得ません。

グリペン提供の機会を提供中

スウェーデンはウクライナの要請に応じて、「グリペンの運用評価を行う機会」を提供しています。スウェーデン国営ラジオによれば、政府は「まもなくグリペンの提供条件を調査するよう軍に命じる予定だ」と報じられており、長期的な取り組みとしてグリペンの提供が具体化しつつあります。しかし、スウェーデンのジョンソン国防相は、「安全保障上の理由でグリペンのウクライナ提供検討はNATO加盟後に行う」と発表し、注目を集めています。

出典:SO Johnson/CC BY-SA 2.0 ブラジル空軍のグリペンE
出典:SO Johnson/CC BY-SA 2.0 ブラジル空軍のグリペンE

複雑な経緯からの政治的膠着状態

この問題を理解するためには、トルコのパトリオットシステム導入まで遡る必要があります。トルコはオバマ政権時代にパトリオットシステムの導入交渉を開始しましたが、技術移転や現地生産を要求したため、米国が難色を示しました。そのため、トルコはロシアの提案であるS-400を導入することを決定しました。これに対し、米国は導入交渉を再開しましたが、S-400導入の撤回とパトリオットの導入を要求しました。さらに、もしS-400を導入するなら、トルコはF-35プログラムから追放されるという圧力をかけました。

出典:Lockheed Martin
出典:Lockheed Martin

F-35プログラムへの参加には「ロシア製装備品の導入禁止」という条項は存在しなかったため、トルコは米国の横暴だと反発しました。しかし、米国は全てのプログラム参加国の賛成を得たことを理由に、トルコを追放しました。また、米議会はトルコ制裁を要求し、「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」を発動しました。この制裁法は、米国の国内法で、第三国の主権に基づいた決定に制裁を加えるものです。しかし、この制裁法は非難を浴びることもあり、米国の横暴だとの批判も相次いでいます。

出典:vitaly kuzmin / CC BY-SA 4.0
出典:vitaly kuzmin / CC BY-SA 4.0

政治的な交渉が難航

こうした状況の中、トルコはトルコ制裁の解除を条件にフィンランドとのNATO加盟を要求しました。フィンランドは条件を満たし、加盟が承認されました。一方、スウェーデンではトルコとの対立があり、交渉が難航しています。エルドアン大統領の行動に対し、スウェーデンでは「エルドアン大統領に似せた人形の逆さ釣り」や「トルコ大使館の外でコーランを燃やす」といった騒ぎが発生しました。

出典:NATO
出典:NATO

最終的にNATOとスウェーデンは、テロ対策やトルコのEU加盟に関する協定を結びました。エルドアン大統領もスウェーデンの加盟を批准することを約束しました。しかし、メネンデス委員長はトルコとギリシャの対立を理由にF-16V売却に応じない姿勢を示しました。また、スウェーデンもNATOに加盟するまでグリペンのウクライナ提供を行わないとしています。

出典:Senator Bob Menendez/CC BY 2.0 DEED
出典:Senator Bob Menendez/CC BY 2.0 DEED

最終的な結末はまだ分からない

このような状況下で、最初に折れるのは誰なのか、あるいは政治的な膠着状態が続くのか、正直なところ、もう訳が分からない状況です。

スウェーデン国営放送は、政府がグリペンのウクライナ提供条件を調査することを報じました。また、ウクライナ人によるグリペンのテストが始まったことや、スウェーデンのNATO加盟問題が長期化していることが報道されています。さらに、トルコは交渉を急がない姿勢を示しています。一方で、政治的な成果を手に入れたトルコはNATO加盟手続きを進めることでスウェーデンと合意しました。

※アイキャッチ画像の出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

原文のソース:https://grandfleet.info/european-region/sweden-considers-providing-gripen-to-ukraine-after-joining-nato/