中国「最弱総理」李克強氏の死で垣間見えた「却って高まる存在感」の皮肉

李克強首相(当時)

中国で急逝した李克強前首相を追悼し、その功績を再評価する動きが出ています。改革派だった李氏を懐かしむ背景には、毛沢東時代に回帰するかのように改革を後退させ、景気低迷をもたらした現政権への不満もあります。李氏は現役時代、習近平国家主席の「1強」体制の確立によって権限を奪われ、「史上最弱の総理」ともやゆされました。しかし、皮肉なことに彼の死去によって存在感が高まっており、習指導部は追悼文の公開や集会を制限するなどして反政府行動につながらないよう神経をとがらせています。

追悼文

中国メディア「財新」は今月6日、「改革へのブレークスルー(打開)が急務だ」と題する社説を公開しました。この記事は、2013年11月の中国共産党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で経済体制改革の加速に向けて打ち出した政策綱領を再評価しています。

社説が公開されると、中国の交流サイト(SNS)は大騒ぎになりました。この政策綱領は、当時、首相に就任したばかりの李克強氏率いる国務院(政府)が慎重にまとめたものでした。

政策綱領は、金融業の対外開放や行政機能のスリム化、民間企業の活性化措置などによって市場メカニズムを効率的に機能させることを目指していました。公開当初は賛否両論でしたが、北京の改革派知識人たちは「これが実現すれば中国の問題はほぼ解決するだろう」と期待を寄せました。

ところがその後、習氏への権力集中に伴って、李氏の影響力は低下しました。国有企業改革が進まず、政府の市場介入はむしろ増えました。経済改革は停滞し、野心的な政策綱領は実現できないままに終わりました。

財新の社説は政策綱領の重要性を再度強調し、現在の状況についてこう嘆いています。「10年前と比べ、中国経済は下押し圧力に直面し、(労働人口の増加による)人口ボーナス期間は急速に終わり、外部環境も悪化しています。地方財政の逼迫、不動産や地方債務による金融リスクも浮き彫りになっています。」その上で、政策綱領が実現していれば「現在の経済社会の多くの困難は避けられたはず」と指摘しています。

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