自分の子という実感がない――虚無感に襲われた早産児の母、探した親の自覚

保育器の中で妊娠29週1080gで生まれた次女を〝抱っこ〟する羽布津碧さん=本人提供

日本では、およそ10人に1人が2500g未満で生まれる「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」です。早産、多胎児の増加、妊婦の体重制限、妊娠年齢の上昇などを背景に、小さく生まれる赤ちゃんの割合は50年で2倍近くになりました。産後、赤ちゃんより先に退院する母親も多く、面会の日々に孤独を感じる人もいます。家族の思いを伝える機会は少なく、状況を知らない人の声に悩むことも。早産児3人を育てる母親は「何げない言葉に追い詰められることがある」と振り返ります。11月17日は「世界早産児デー」です。

35週、29週、26週で生まれた子

東京都豊島区に住む羽布津碧(はぶつみどり)さん(41)は、小さく生まれた3人の子どもを育てています。多くの赤ちゃんは妊娠37~41週(正期産)で生まれ、平均体重は約3000g、平均身長は約49cmのところ、長女(4)は妊娠35週1643g、40.5cm、次女(3)は妊娠29週1080g、36cm、長男(1)は妊娠26週809g、33cmで生まれました。

「子どもがほしい」と思ったのは結婚5年目。それまであまり意識していませんでしたが、持病の影響で医師から妊娠が難しくなるかもしれないと告げられた際、初めて「自分の子に会いたい」という思いが芽生えたそうです。

「いつかは子どもがほしい」と思っていた夫の恭平さん(41)も羽布津さんの事情を考え、ともに30代半ばで妊活を始めました。

トイレにこもって搾乳

生まれたころの長女=羽布津碧さん提供

不妊治療を経て、体外受精で長女を妊娠しました。妊娠中は、重度のつわりで2度入院したり、赤ちゃんの胎動が感じられず緊急入院になったり、不安定な日々。それでも、「うちの子は大丈夫。無事に生まれてくるはず」と信じて過ごしました。

陣痛がきて、正産期よりも少し早い妊娠35週に経膣分娩で出産。泣き声を聞き、「ちゃんと生きてる。大丈夫」とほっとしたといいます。長女はNICU(新生児集中治療室)に運ばれました。

羽布津さんは退院後、3時間おきに搾乳した母乳を持って毎日病院に通いました。

「赤ちゃんのためにやってあげられることはこれしかない」と、病院や外出先のトイレで手動の搾乳器を使い、赤ちゃんの動画を見ながら搾乳することもありました。思うように母乳が出ないむなしさや、「みんなが排泄(はいせつ)する場所で何やってるんだろう」という情けなさで涙が出ました。

授乳室があっても「赤ちゃんがいないのになぜ?」と思われたくなかったため、使わなかったといいます.

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