クマの九州上陸の可能性を探る――関門海峡を泳ぐ?

クマの九州上陸

2022年9月、山口県萩市で撮影されたツキノワグマ。山口県農林総合技術センター提供。

東北地方を中心に大きな人的被害をもたらしているクマ。中国地方でも生息域を広げつつあり、本州最西端の山口県でもクマの目撃情報が増えてきました。自治体が警戒を強める中、関門海峡を挟んで隣り合う九州に渡る可能性を指摘する専門家もいるのです。果たして、九州に野生のクマが再び上陸することはあるのでしょうか?

九州のすぐ近くでも…山口県でのクマの目撃地点

下関での目撃 12年以降、毎年に

日本に生息するクマは、北海道のヒグマと本州・四国のツキノワグマの2種類がいます。そのうち、広島、島根、山口を含む西中国地方のクマが生息域を広げています。

山口県を含む3県の調査によると、西中国地方のクマの生息域は1999年には5000平方キロだったのが、2020年までに約8200平方キロに広がり、2022年時点で約1300頭のクマが生息していると推定されています。

本州最西端の山口県では、今年4月から現在までにクマの目撃情報が388件(11月24日時点)報告されています。既に2022年度の254件を上回り、過去10年で最多となりました。今年は人的被害は出ていませんが、例えば2022年6月、同県岩国市の山間部で70代の男性が道路を散歩中にクマに遭遇し、首などに数週間のけがを負った事例もありました。

山口県の担当者は生息域の拡大理由について「分からない」としています。しかし、元々はクマが絶滅の危機に瀕していたため、1994年から狩猟が禁止され、各県が保護策を取ってきました。生息数の増加に伴い、3県は2022年4月からの5年計画で対策を「保護」から「管理」に転換しました。年間の捕獲頭数目標も、前回計画開始時の80頭から135頭に引き上げられています。

山口県下関市では、2012年以降、クマの目撃情報が毎年報告されるようになりました。今年10月には関門海峡から数キロの地点でクマが目撃されました。この事実から考えると、目の前の九州にクマが渡る可能性についても気になってきます。

九州ではツキノワグマが生息していましたが、絶滅したとされています。1987年に大分県旧緒方町(現在の豊後大野市)で捕獲されたクマは、調査の結果、本州から持ち込まれたクマかその子孫であることがわかりました。それ以前にも、大分県と熊本県の県境付近で、子グマの死体が1957年に見つかっています。

「あの潮流では無理」――可能性はある

九州へ上陸するための手段としては、関門橋を渡る、関門トンネルを通る、海峡を泳ぐの3つが考えられます。しかし、日本クマネットワークの九州地区代表委員である足立高行さんは、「いずれの場合も九州へ渡る可能性は低いと考えています」と述べています。橋やトンネルの場合、クマは人から追い立てられたりする特殊な状況でなければ立ち入らないとされているそうです。

一方、海峡を泳いで渡る可能性については、関門海峡の幅が最も狭いところで約650メートルしかないため、クマには泳ぐ能力があると考えられます。ただし、最大10ノット(時速約18.5キロ)にもなる潮流がハードルとなります。足立氏は、「あの潮流では無理です。潮流の遅い場所を渡るか、どこかに流される可能性はなくはないですが、個人的には懐疑的です」と話しています。

一方、森林総合研究所東北支所の動物生態遺伝チーム長である大西尚樹さんは、「関門海峡の幅であれば渡る可能性はある」との見解を示しています。

大西さんによれば、「実は、本州のクマのルーツは九州にあるのです」と語ります。氷河期の海面が低かった時代、朝鮮半島と九州北部は陸続きだったため、九州から移ってきたクマが本州や四国へ広がっていったとされています。「本州のクマが九州に渡る場合、歴史的には『帰ってきた』ということになります」と大西さんは説明しています。

もちろん、それは喜ばしい話ではありません。大西さんは、「クマは人的被害を引き起こす恐れがあるため、九州への渡来によって被害が広がる可能性もあります。地域の方々がどのような対応を取るべきかを考える必要があります」と指摘しています。

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この記事は日本ニュース24時間の一部です。九州へのクマの上陸に関する可能性について探ってみました。関門海峡を泳ぐクマ――それはあるのでしょうか?詳しくは日本ニュース24時間でお読みください。