障害者に「特別扱いできない」はNG…来春から民間企業に求められる合理的配慮 「過重な負担」の線引き難しく〝炎上〟懸念も、当事者に入り交じる期待と不安

ネット上で差別だと非難されないかという不安を抱えた企業が参加した「合理的配慮はじめませんか?」イベント=2023年8月、大阪市

 「合理的配慮」とは、2024年4月から民間事業者に義務付けられるもので、障害者が生活上の困りごとや障壁に直面した場合に、過重な負担にならない範囲で配慮することが求められます。具体的な例としては、車いすの移動を補助するスロープの設置や、聴覚障害者に対して筆談や手話で対応するなどが挙げられます。この新たな要件に対して、企業は積極的な取り組みが求められますが、具体的な準備方法はまだ模索中です。もし対応を誤れば、インターネット上で非難されることに繋がる可能性もあるため、企業や関係者は慎重な対応が求められます。また、障害のある当事者側には期待と不安が入り交じっています。共生社会の実現に向けては、企業と障害者が対話を重ねることが重要です。(共同通信=水内友靖)

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「リーンオンミー」が開いた企業向けイベント「合理的配慮はじめませんか?」=2023年8月、大阪市

 今年の8月に、大阪市内で「合理的配慮はじめませんか?」というイベントが開催されました。このイベントには、自社の配慮が差別だと非難されないかという不安を抱えた企業が参加しました。イベントを通じて、制度の内容を学び、自社においてどのような配慮が求められるか、そしてどのように応じることができるかを考えました。

 このイベントの主催者は「リーンオンミー」という会社です。リーンオンミーは福祉施設や企業向けに障害者の理解を深めるためのeラーニング事業を展開しています。彼らは知的障害者や精神障害者への接し方に関するオンライン教材を無料で提供しています。

 教材では、相手のペースに合わせて時間をかけて返答を待つことや、はっきりと短く具体的に伝えること、保護者ばかりに話しかけることを避けることなどが紹介されています。この教材は元々、大阪・関西万博のスタッフ向けに作成されましたが、現在ではメーカーや小売業などでも利用されています。

ダウン症の弟との接し方を友人に…「使命だ」と起業

「リーンオンミー」の志村駿介社長=2023年10月6日、大阪市

 リーンオンミーの社長である志村駿介さんは、「義務化自体や準備の仕方を知らない企業が多いです。特に見た目で分かりづらい障害の場合、その傾向が強いです」と説明しています。

 志村さんは、3歳年下の弟がダウン症で知的障害があることを持っています。幼少期から、弟との接し方を友人たちに伝えてきました。彼の経験を生かすことが志村さんの使命だと考え、2014年にリーンオンミーを起業しました。

 身体障害の配慮方法は比較的具体的にイメージできますが、知的や精神障害の場合は接した経験のある人が少ないと思われます。志村さんは「来春の義務化は非常に意義深いものです。障害者と向き合い、彼らの意思を尊重できる社会の実現につなげるための契機として活用しなければいけません」と強調しています。

対応済みか、改善が必要かを〝診断〟

 大阪市にあるコンサルティング業者「ミライロ」は、合理的配慮義務化への準備を後押しするために新しいサービスを始めました。それが、「ミライロサーベイ」と呼ばれるサービスです。企業は質問に答えることで、自社の合理的配慮の対応状況を診断することができます。

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