枝野幸男氏が、東京・四谷の老舗焼肉店「龍月園」を訪れました。彼は、自民党はもはや岸田文雄首相で次の総選挙に臨まないだろうと述べ、次期自民党総裁には驚きの女性閣僚が選ばれるだろうと予想しています。もし首相が急に変わり、衆院が解散されたら…。その場合、彼らが用意する大胆な迎撃策に、同席したメンバーは言葉を飲み込んでしまいました。
「ポスト岸田」候補とは？
枝野さんと一緒にいた酒井充政治部長は「枝野さん、ちょっと悠々自適の時間が長すぎるんじゃないですか。代表退任から２年が経ちましたよ」と声を挟みました。
「豊臣秀吉が関白になってから関ヶ原の戦いまで、徳川家康は何年待ちましたか」と枝野さんが尋ねると、松本学野党キャップは「１５年くらい」と即答しました。枝野さんは「以上です。私は永田町の中でズレていて、そういう見方をするのです」と言いました。でも、１５年も経過すると彼は７５歳になってしまいます。
「じゃあ、鈴木貫太郎が首相になったのは何歳？」と酒井部長が尋ねると、「７７歳です」と即答しました。「今の政治家は目先のことに走りすぎです。次の総選挙や次の代表選についてです。どうでもいいことに走りすぎるため、政治が良くならないんです。『バカは経験に学び、賢い奴は歴史に学ぶ』というでしょう」
枝野さんは「もう少し肉を食べたいな」とつぶやきました。おかみさんはすかさず「ミノが人気ですよ」と答えたのです。
枝野さんのリーダーシップについて話し合っているうちに、何となく岸田文雄首相の顔が浮かびました。私が知る限り、首相は頑固で、政策の面では党内の慎重な意見をあまり受け入れることはありません。その一方で、9月の内閣改造や自民党役員の人事では、派閥の意向に応じすぎて自ら首を絞めたような気もします。
自民党では、ネクストバッターサークルで茂木敏充幹事長が腕をふるっているようです。
「岸田さんが次の総裁選に出ないとしても、茂木さんにいくかなあ。僕は上川陽子外相が出てくる気がしてならないんだ」と枝野さんが話します。
枝野さんの番記者を務める児玉佳子記者が「知名度という点では大丈夫ですか」と尋ねましたが、枝野さんは「知名度がないからかえっていいんですよ」と即答しました。
上川さんは、かつて法務大臣時代にオウム真理教事件に関連し、13人の死刑執行を指示したことで知られ、決断力と責任感が高く評価されています。9月の人事では外相に抜擢され、今や最も注目されている閣僚となりました。ただし、彼女が次の首相候補として真剣に取り上げられたことはありません。また、彼女は岸田派の一員である宏池会に所属しています。同じ派閥から首相を連続して出すのは避けたいと考える人もいます。酒井部長は「岸田さんは上川さんを後継者として考えていない」と指摘しましたが、枝野さんは「だからこそ、上川さんが候補になると思うんですよ。誰も彼女を宏池会の人間だとは考えていないでしょう。だからこそ彼女が選ばれるのではないかと」と言いました。
代表候補は辻元、蓮舫、西村各氏？
もし岸田さんが辞めて上川さんが総裁選に出馬し、圧勝したとすると、その直後に上川政権が衆院を解散した場合、立憲民主党にとっては最悪のシナリオとなるでしょうか。
「そのとき、うーん、こちらも女性党首を選ぶか。後から出てくる形になるし、安易かなあ。これまでの経験や実績から言って、辻元清美参院議員や蓮舫参院議員、西村智奈美前幹事長などが候補になるかもしれません」と話が一瞬途切れました。大胆な戦略ですね。「現状では数少ない女性リーダーを、そんな安易に利用してはいけないんですよね」
酒井部長は「上川さんは優秀で、自民党内ではまともな議員です。ただし、未だに政治家として実践の場に立っていません。新たな職に就任してから、半年くらいで問題が浮上する可能性もあると思います」と述べました。
上川さんは外相就任前は茂木さんの下で自民党の幹事長代理を務めていました。当時、ある党幹部は上川さんに対し、「党内の政治的な事情全般を学ばせたい」という意図を語っていました。
「50歳を過ぎてから政治の事情を学び始めるのは厳しいですね。そういう立場に就いても、できる人とできない人は変わりません。立憲民主党でも、中堅および若手を育てるために『一定の地位に就かなければならない』と言われることがあります。ただし、できる人は自然にその地位に就く話になるんです」と枝野さんが言います。
カメラマンの酒巻俊介さんが「若い人たちを育てるとは何を意味するのか、よく分かりません」と頷きました。
「そうですね。冷たいと言われるかもしれませんが、『自分で育ってきてください』と思ってしまいます。私たちは企業ではなく、一国一城の主である国会議員の商店街連合なんですよ。だれかに育ててもらおうなんて考えないでください」
ジャズピアノの軽快なBGMと、焼肉を焼く音だけが卓上に響きます。
聞いてみますが、立憲民主党を立ち上げて代表になった当初、政権を握れると思いましたか？
「もちろん」
首相になる覚悟はありましたか？
「そうでなければ辞めます。もう一度政権を取り、首相になるつもりでやっています。その可能性がなくなったと感じた瞬間に、私は引退しますから」（聞き手: 水内茂幸）
枝野幸男さんの「夜の政論」（番外編）は12月13日午前11時30分にアップされます。
