日本映画界の労働環境は改善できるはず――カンヌ受賞、役所広司が語る現場の変化と課題 #ニュースその後

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(撮影:野村佐紀子)

役所広司(67)は今年、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞しました。彼はアジアを代表する俳優であり、キャリアは40年以上に及びます。「いい内容でいい役があれば、手ぶらでも出演しますよ」と彼は言っており、低予算の作品にもハリウッド映画にも出演してきました。彼は表現の制約や製作環境の変化、日本と海外の違いを現場で実感しています。では、彼は働く環境や日本映画界の課題についてどのように考えているのでしょうか。(文中敬称略/撮影:野村佐紀子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

ハリウッド進出は「一度も思ったことがない」

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(カンヌ国際映画祭の授賞式で ©Kazuko Wakayama)

役所広司は「(受賞の前から)カンヌで取材してくれる海外メディアの人がたくさんいました。『最優秀男優賞を受賞するんじゃない?』と上手に言う人もいて、正直驚きました(笑)。私は嬉しさと喜びを感じています。賞自体ももちろんですが、観客や世界中のジャーナリストの反応を知ることができるのは映画祭の醍醐味です。特に欧米の人たちは、解釈の余地があるものについて話し合うことが好きですよね。映画を文化としてしっかりと認めていると感じます」と語りました。

役所広司が初めてカンヌ国際映画祭の授賞式に立ったのは1997年のことで、映画『うなぎ』がパルムドール(最高賞)を受賞しました。彼は帰国した今村昌平監督の代わりにトロフィーを受け取りました。

「その頃、映画祭について何も知らず、初めてパルムドールが最高の賞であることを知りました。世界の映画ファンがこんなにもたくさんいて、日本映画を本当に楽しみにしていることを初めて知りましたね」と役所広司は振り返りました。

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(カンヌでヴィム・ヴェンダース監督と一緒に多くの取材を受けた ©Kazuko Wakayama)

今回、役所広司が最優秀男優賞を受賞した映画『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷の公共トイレの改修プロジェクト「THE TOKYO TOILET」を舞台にしています。彼は清掃員の役を演じています。この作品の監督はドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダースです。

役所広司は「見たことのない映画に出演したいとずっと思っていますが、なかなかその機会はありません。今回のような作品は、おそらく日本の映画会社では企画が通らないでしょう。『どうやって観客を呼び込むつもりなのか』と言われるでしょうね。商業映画の場合は、予算の範囲内で収益性がある作品を作る必要がありますが、今回の企画は『公共トイレを舞台に清掃員の物語を、あとは自由に作ってください』というものでした。こんな映画に出演できたことはとても幸せです」と話しました。

エンド

【出典リンク】
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc278a0d59140b6b840df30c45de299b42d7b41a