総務省の有識者会議は30日、AMラジオ局のAM放送廃止とFM放送への転換を容認することで一致した。日本民間放送連盟(民放連)が3月に総務省に要望していた。現在、大半の民間AMラジオ局が補完放送(ワイドFM)としてFM放送を併用しているが、この設備投資の重複の負担を減らし、経営改善につなげる。令和5年にもAMを事実上停波するラジオ局が出てくる見通し。
AMの送信設備は、広い敷地に高さ100メートル規模のアンテナが必要となるなど大規模でコストがかかる。老朽化への対応も、AM放送を継続したまま、同じ場所で建て替えや設備の更新をするのは難しい。民放連は「現実的に極めて困難」として、比較的簡易な設備で送信できて低コストとなるFM放送のみとすることを可能にする制度改正を求めていた。NHKはAM放送を継続する。
現行ではワイドFMは補完的位置付けのため、AMだけを停波することは認められていない。民間ラジオ局は聴取率低下などで広告収入が落ち込んでおり、FMへの一本化で経営改善につなげる意向だ。
有識者会議が30日公表した取りまとめ案では、5年にもAMを長期間停波する実証実験を認め、2年秋までに実験の概要を公表するとした。
より短い波長の周波数が使われるFM放送は、音質が良く、屋内でも受信しやすい。一方、山間部などでは受信しにくく、また、ワイドFMの周波数は旧来のラジオでは受信できない。対応ラジオへの買い替えが必要なため、FM放送への転換は、業界を挙げたPR活動などが必須となる。